【経営コンサル・投資家|武藤輝之】4つの仕事を持つ“妖精”が「てるは、てるやで」にたどり着くまで

データ分析会社を経営しながら、経営コンサル、マインドコンサル、投資家としても活動する武藤輝之さん。経営コンサルでは、エステサロンの月商を3カ月で5倍に伸ばし、20年以上取り組んできた投資では、海外取引所の月間収益率ランキングで世界8位になった経験もあります。

一方、その歩みは決して一直線ではありません。薬学部を中退した後、IT企業勤務や派遣社員、講師、配送業など、8回の転職を経験。現在も複数の仕事を並行しており、一つの肩書では表しきれない、つかみどころのない人物像から、仲間の間では“妖精”と呼ばれています。

そんな武藤さんに、北原孝彦さんが伝えたのが「てるは、てるやで」という言葉。武藤さんは、そこにこそ「選択と集中」の本質があると語ります。これまでの歩みと、現在の仕事観について伺いました。

データ分析から投資まで。“妖精”が持つ4つの仕事

――現在の事業について教えてください。

大きく分けると、データ分析、経営コンサル、マインドコンサル、投資の4つです。

本業はデータ分析で、自分の会社でデータエンジニアとして実務も担っています。主に、企業が持つ顧客データの分析や活用を支援するほか、業務を効率化するツールも開発しています。例えば、スプレッドシートのボタンを押すだけで、Googleカレンダーに年間予定を一括登録できるツールなどです。

――幅広いですね。経営コンサルでは、どのような方を支援していますか?

これまで、不動産会社と女性専用エステサロンなどを支援しました。不動産会社では、着手金なしの成功報酬型モニターとして関わり、「利益が出たら半分をください」と伝えたところ、後日150万円が振り込まれました。エステサロンでは、3カ月で月商が20万円から100万円超に伸びました。

――具体的には、どのような形で関わっているのでしょうか。

グループではなく、1対1の個別で支援しています。基本は月1回、1時間で、オンラインを中心に、可能であれば対面でも行います。同じ助言をしても、誰もが同じように成果を出せるわけではありません。その人にお客さんがつく理由などを見ながら、その人に合った方法を一緒に考えています

――マインドコンサルでは、何をしていますか?

相談者の考えを整理し、成果を出すために必要な行動と優先順位を一緒に考えます。何から始めればよいか分からない方には、最初の一歩を明確にする。すでに動いている方には、セミナーへの参加や交流会、集客施策などを整理し、何を優先すべきかを決めていきます。相談に来るのは、頑張っているのに最初の売り上げを作れない方や、行動が成果につながらない方が中心です。

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――投資では、現在はどのような活動をしていますか。

個人投資家として、22〜23年ほど外国為替証拠金取引(FX)に取り組んでいます。現在は月100万円ほどの利益を出しており、海外取引所の月間収益率ランキングでは、約30%の収益率を記録して世界8位になりました。現在は無料の勉強会も開いています。

――これだけ幅広く活動していると、北原さんから「一つに絞った方がいい」と言われそうですが……。

それが、そうでもないんです。ほかの人になら、「ひとつの事業に集中しろ」と言うと思います。

でも、私には「てるは、てるやで」と今の状態を肯定してくれるんです。というわけで、事業は複数ある状態です。自分でも何者なのか、うまく説明できません(笑)

――武藤さんは「世界のてるひこ」と名乗っていますもんね。もはや何者なのか分かりません……!

ですよね。つかみどころがなく、どこか一つの枠にも収まらない。でも、しばらくすると、なぜかまた声を聞きたくなると言われます。そんなところから、僕は“妖精”と呼ばれるようになりました

睡眠は1日90分。薬学部を中退してIT業界へ

――何とも不思議な存在の武藤さん。これまでの経歴を聞かせてください。

薬剤師になれたら、食いっぱぐれないだろうと思って薬学部に進学しました。ただ、生物が大嫌いだったんです。人体について学んでも、よく理解できなかったです。

これからどうしようと思っていたその当時、世間はITブームでした。「この業界は今後伸びる」と確信して、薬学部を中退して21歳頃にITベンチャー企業へ飛び込みました。

――ITベンチャーとは思い切った舵切りでしたね。

まさに。そして、ITの仕事は激務でした。私はとあるプロジェクトのサブリーダーを任され、いちメンバーとの役割の違いを実践で学んでいました。通勤は片道2時間ほどで、睡眠時間が1日90分ほどの日もありました。遅い時間に帰宅し、少し寝て、また会社へ行くという仕事漬けの生活でしたね。

そんな折、プロジェクトを取りまとめていた元請け会社のリーダーが突然いなくなったんです。

――え!?何があったのでしょうか。

月曜の朝、その方の席にはコーヒーのマグカップが置いてあって、ノートパソコンも立ち上がっていました。だから私は、今日も朝早くから働いているんだろうと思っていたんです。ただ、昼になっても姿が見えない。午後になって警察から連絡が入りました。保護しているので迎えに来てほしい、と。意思疎通ができる状態ではなかったそうです。

その後、上司から「席が空いたから、君がリーダーになってくれ」と頼まれました。でも、その席に座ったら、自分も同じように心身を壊すんじゃないかと思ったんです。だから、「辞めます」と伝えました。その日は久しぶりに、定時で帰れましたね。

地区1位を取っても「これ以上頑張らないで」

――IT企業を辞めた後は、どうされましたか?

最初の会社は規模が小さく、働き方もかなり過酷だったので、次は大きな会社へ行こうと考えました。ただ、いきなり上場企業に入るのは難しいと思い、上場企業の子会社を探しました。

薬学部で学んだ分野のなかでは分析が好きだったので、分析会社を選び、23歳頃に派遣社員として入りました。その後、正社員になり、32歳頃まで勤めました。

――その会社で、印象に残っている出来事は?

コスト削減や利益の向上、業務の効率化といった改善成果を競うコンテストがありました。親会社や子会社、関連企業が参加するもので、私たちのチームは京浜地区で1位になりました。賞与は70万円ほどになりましたが、会社からは「これ以上頑張らないで」と言われたんです。

賞与は基本額から減点される仕組みでしたが、私は成果に応じて加点され、制度上の上限に達しました。それ以上は評価を上げられず、待遇も本社社員の水準を超えていたので、「社内には言わないでほしい。20万人が暴動を起こす」と言われたんです。これ以上頑張っても待遇が変わらないなら、ここに残る理由はない。そう考え、退職を決めました。

――退職後は、どうしましたか?

社会人向けのリーダーシップ講師、事務、配送業、代理店業など、さまざまな仕事を経験しました。転職は8回しており、同じ会社に2回入ったこともあります。

2年ほど、自分に何ができるのかを探しながら過ごした後、2015年に建築会社を立ち上げました。その後、建築事業が立ち行かなくなり、会社の事業を建築からデータ分析へ転換しました。

――さまざまな仕事が並んでいますが、振り返ってみて共通点はありますか。

自分では共通点が分からなかったんですよ。

でも、アカデミー仲間の大河さんから「てるさんは、数字を管理する人ですね」と言われてまして。確かにそうだなと。振り返ると、分析会社で働き、現在もデータ分析をしています。A4用紙に数字がびっしり書かれた資料を渡されても、すぐに読み取れました。自分では「楽な仕事だな」と思っていたのですが、数字を読み取る速度が、ほかの人より速かったようです。

――データ分析、経営コンサル、投資、マインドコンサル。扱う対象は異なりますが、数字や情報を整理する力が、それぞれの仕事に生きているのですね。

そうですね。特にビジネスは、ほとんど数字で捉えられます。接触した人数や来客数、成約までにかかった期間、成約率、成約金額などを追えば、どこに問題があるのかが見えてきます。ただ、数字に興味がない人へ細かく説明すると、「難しくて分からない」と言われてしまいます。そのため、相手によっては数字を細かく見せず、「まず売り上げを立てましょう」とシンプルに伝えています。

「選択と集中」とは、一つに絞ることではない

――北原さんを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

2023年3月に、YouTubeで知りました。北原さんの動画を何本か見るなかで、相談者に「お客さんは何をきっかけに来たのか」「最初にどう接触したのか」と尋ねている場面があったんです。

相談者は「Instagramを見て」と答えていましたが、それだけでは足りないと思いました。フィードを見たのか、ストーリーズを見たのか。そこまで説明できなければいけない。それを見て、「いつか自分も北原さんに聞かれる」と思ったんです。私も「YouTubeを見て」としか答えられない状態だったので、きちんと説明できるように、そこまでの視聴履歴をスクリーンショットで残しました。

それで、「会いに来れば北原さんと話せる」と聞いたので、「では、会いに行って話してやろう」と思って、その月に「北原の精神と時の部屋」(※)に入りました。

※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。

――行動力がすごいです!!

推しの舞台を見に行くような感覚でした。参加費は、舞台のチケットが2万円だと思えばいい。この人に会う価値があるかを、自分で確かめたかったんです。会って嫌な人だったら、やめればいいと思っていました。

――実際、北原さんの話を生で聞いてみてどのようなことを感じましたか。

まずは東京合宿に参加したのですが……正直、話の意味を十分には理解できませんでした。YouTubeで聞いていた内容と同じはずなのに、自分の仕事にどう当てはめればよいのか分からなかったんです。特に迷ったのが、「選択と集中」でした。午後に講師の今岡勇喜さんのところへ行き、「何も分かりません」と伝えました。すると、「てるさん、商品が決まらないとアドバイスできないですよ」と言われたんです。

当時は建築事業が立ち行かなくなり、4年ほど続けたデータ分析事業も一段落していました。次の何かが欲しい、自分の商品が欲しいと思っていたのですが、何を商品にするのかは決まっていませんでした。今あるものの中から何を一つ選び、何に特化すればいいのか。だから「選択と集中」と言われても、分からなかったんです。

――最初の合宿では理解できなかった「選択と集中」を、現在はどのように捉えていますか。

何かを選ぶことではなく、「捨てること」だと思っています。何かに集中するには、不要なものを手放さなければいけない。最後に残った、本当に大切なものへ注力することが本質です。ただ、取り組める数は、その人の馬力によって違います。一つしかできない人もいれば、三つできる人もいる。僕の場合、仕事は四つありますが、いずれも「数字や情報を整理し、次に何をすべきかを考える」という一つの軸でつながっています。

北原さんは、そうした難しい本質を、相手に伝わるところまでかみ砕いているのだと思います。だから最初は「自分がコントロールできるものは何か」という柔らかい話から、少しずつ原理原則へ近づいていく。その奥にある考え方を理解できれば、外からは異なる行動に見えても、根本は同じだと分かります。だから北原さんも、四つの仕事をしている私に「てるは、てるやで」と今の状態を良しと捉えてくれているのだと思います。

「弟子より先に入れば追い抜ける」とアカデミーへ

――その後、なぜ北原孝彦アカデミー(※)(以下、アカデミー)に入ったのでしょう?

アカデミーに入った理由は大きく二つあります。一つは、弟子区画(※)で成果を出した人たちが参加してくる前に、自分が一番を狙いたかったから。もう一つは、熱海のリトリートにどうしても参加したかったからです。

まず一つ目について。アカデミーの前に弟子区画という仕組みがあったのですが、私は参加していませんでした。当時の自分には、「師匠に何とかしてもらいたい」という姿勢につながりかねない仕組みに見えたからです。もちろん、素敵な方も多くいましたが、一部には「自分たちは弟子だから、ほかの人とは違う」という雰囲気を感じることもありました。その後、コンセプトや参加条件を変えたアカデミーが始まると知りました。弟子区画で成果を出した人たちも参加するだろうと考え、それなら先に入って一番を狙おうと思ったんです。

もう一つの理由が、熱海のリトリート(※)です。以前にも熱海で非公開のリトリートがあり、私は弟子ではありませんでしたが、「てるさん、来る?」と声をかけてもらったんです。「弟子かどうかは関係ないから」と言われ、日帰りで参加しました。とても楽しかったので、次は最初から最後まで参加したいと思いました。アカデミーへ申し込んだ後で熱海の企画を知り、「あのときの本番だ!」と思って、全日程に参加しました。

※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

※弟子区画:「3年間は挑戦から逃げない」と北原孝彦と約束した人が参加する。毎月の月報提出に加え、弟子合宿では全員が活動報告を行う。現在は募集を終了している。

※リトリート:仕事や日常から離れて、静かな場所で数日間過ごし、心身をリフレッシュさせる旅のこと。

――武藤さんは、アカデミーに集まるメンバーたちをどのように見ていますか?

価値観や行動の基準が合う人が多いと感じています。東京や大阪でアカデミー会が開催されますが、「名古屋ならすぐ行ける」「仙台なら日帰りで行ける」と考えるような人たちです。

私も、店舗ビジネスをしていないのに合宿にて店舗向けセミナーへ参加したり、ご飯を食べるために名古屋のオフ会へ足を運んだりしていました。北原さん本人以上に、「北原さんと、その仲間たち」に惹かれていたのかもしれません。

――アカデミーに入って、何が変わりましたか。

アカデミーに入ってから人とのつながりが広がり、特にUBM(※)神奈川支部会の支部長になってからは、地元の仲間が増えました。

地元の人とは、最初から共通の話題があります。「今度ご飯に行きましょう」と、次の約束にもつながりやすいです。今は、一度会っただけでは話し足りなかった人たちが再び集まれる場として、「てるーの酒場」も開いています。

※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。

――最後に、これからどんな役割を担っていきたいか聞かせてください。

自分に求められる役割は、これからも増えていくと思います。自分の知識や考えで力になれるなら応え、もっと適した人がいれば紹介できる存在でいたいです。

私の人生は、「何が起こるか分からない」を体現してきたと思います。「何もできない」「何をしたらよいか分からない」と迷っている人にも、行動すればできることは増えていくと伝えられます。才能や天職は、最初から一つに決まっているものではありません。今できることを大切にしながら、できることの幅を広げていきたいと思っています。

経営コンサル・投資家|武藤輝之

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取材を終えて

初めて武藤さんの事業の多彩さを知ったとき、正直「一体何者なんだろう…?」と戸惑いました。その疑問を直接ご本人にぶつけたところ「妖精です」との回答。さらに謎は深まりましたが、よくよく話を聞いて納得しました。北原さんのおっしゃる「求められることを提供する」が形になったのだなぁと。

いつも変化球を投げているように見える武藤さんですが、やっていることは原理原則。「本質を捉える」ことの大切さを感じた取材でした。

(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)

※掲載情報は2026年6月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。