【ネイルサロン経営|藤岡えり】未経験の自宅サロンから9店舗経営へ。家庭最優先でも売上を伸ばし続ける理由
東京を拠点に、フィルインネイルに特化したネイルサロン「’MOANI’ Hiroo(モアニヒロオ)」を直営3店舗、フランチャイズ「TRUST Nail」を6店舗展開する藤岡えりさん。お客様の爪をきれいに保ち続ける技術力と、スタッフが活躍できる組織作りを両立させ、確固たる実績を築き上げています。
サロンを訪れるのは、これまでのジェルネイルで爪が傷んだり、持ちの悪さにストレスを感じていたお客様。一般的な相場の約2倍の客単価でありながら、高いリピート率を維持しています。
元々は人材紹介会社の営業や、メーカーのOLとして働いていた藤岡さん。結婚・出産を機に26歳でネイルの学びを始め、自宅の一室からサロンをスタートしました。
経営が大きく躍進したのは、北原孝彦さんとの出会い。 現在はUBM(※)の講師やコンサルでも活躍されています。「大切な人を大切にしながら、好きなことで人の役に立ちたい」。そう語る藤岡さんに、これまでの歩みを伺いました。
※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。
爪を傷めないフィルインネイルに特化したサロン「’MOANI’ Hiroo」

――藤岡さんの運営しているネイルサロンについて教えてください。
東京の広尾・恵比寿・渋谷エリアで、直営店「’MOANI’ Hiroo」を3店舗運営しています。サロンの一番の特徴は、「フィルインネイル」に特化していること。自爪を傷めず、長持ちするネイルをお客様に提供しています。
また、フランチャイズ「TRUST Nail(トラストネイル)」 を6店舗展開しています。こちらは直営店と中身や仕組みは同じなのですが、ご自分の店舗名で営業したい方が加盟されています。全国展開していて、北海道や兵庫の店舗もあります。
――フィルインネイルとは?
通常のジェルネイルは、合成樹脂のジェルを爪に塗り、UV/LEDライトで硬化させます。つけ替えの際は、溶剤で溶かすか削り落とし、一度爪を裸の状態にしてから新しいジェルを乗せます。これを繰り返すことで爪が傷み、ジェルネイルを続けられなくなる「ネイル離れ」も課題になっていました。
一方、フィルインネイルは、トップやカラー部分だけを削り、爪に密着したベースジェルを一層残して新しいジェルを重ねる方法です。自爪を毎回削らずに済むため薄くなりにくく、ジェルが浮いて爪の表面まで一緒に剥がれるリスクも抑えられます。

――値段はジェルネイルと比べて高いのでしょうか。
私のサロンでは、料金は1万3000円前後です。一般的なジェルネイルの平均単価の倍ほどですが、これまで2週間に1回つけ替えていた方が、当サロンでは月1回で済むようになれば、トータルの費用は同じぐらいになります。爪の健康を守りながら、来店の負担も減らせる。他店で爪を傷めてストレスを感じていたお客様などが、そこに価値を感じて来てくださっています。

ネイルと自分主体で学べる環境に惹かれ、自宅サロンを開業
――ネイルサロンを始める前のお仕事について教えてください。
新卒で人材紹介会社の営業職をやっていて。数字のためにサービス残業を自分からしているような職場で、朝8時から夜11時まで働いていました。私自身も目標達成のために頑張っていたのですが、結婚や出産を考えると難しい環境だと思い、2年弱でOLに転職しました。
――ネイルに興味をもったのはいつ頃ですか?
施術する側として興味をもったのは、転職先のメーカーで隣の席の先輩が自分でジェルネイルをしていたことがきっかけでした。自分でできるんだと驚いたのと、その先輩が「産休後に自宅サロンを開く」と話していて。そこから影響を受けました。
――そこから、どのようにネイルを学んでいったのでしょう。
26歳で結婚・出産を機に退職し、50万円ほどのホームサロン開業コースに通いました。子どもを親に預けながら講座を受けたのですが、学べば学ぶほど、もっと知りたい、もっと上手くなりたいという気持ちが強くなっていって。だんだんと「私でもサロン経営ができるのでは」という気持ちが強くなっていきました。その後、認可保育園に落ちてしまい、外に働きに出るのが難しくなりました。それなら自宅でできるネイルで月2、3万円でも稼いでみようと思い、27歳のときに子連れOKの自宅サロンを開業しました。
――自宅サロンの初期投資はどれくらいでしたか?
自宅の4畳半の部屋に、ネイルデスクとマッサージチェアなどの簡単な家具を入れただけだったので、初期投資はネイルスクール代を除いて50万円以下だったと思います。

――集客はどうやって広げていったのですか。
最初は親や妹、友人、ブログを見て来てくださった方など、月10人にも満たないところからのスタートでした。当時はホットペッパーは掲載料が高く、クーポン目的のお客様が多い印象もあり、利用はぜずにアメブロやmixi、ネイル専門アプリの「ネイルブック」などを使って集客しました。もともと何かにハマると、どんどん試したくなるタイプで。「チラシを配ったら何人来てくれるんだろう」と、子どもをおんぶして自転車でポスティングしたり、夏にはうちわを配ったりと、いろいろ試しました。
そうするうちにリピーターさんが増えて、忙しくなっていきました。ただ、夫との約束で夜と土日は仕事を入れず、子どもを最優先にしていました。でも、お客様に迷惑はかけたくなかったので、業務委託の方に施術をお願いするようになったんです。自宅サロン時代の売上は、多いときで月30万ほど。業務委託の方への支払いを差し引くと、手元に残るのは月10万円あるかないかくらいだったと思います。
自宅サロンから3店舗へ 順調に見えた経営で「迷宮」に

――自宅サロンから店舗を構えたのは、何がきっかけだったんですか?
ネイルサロンを始めて4、5年経った頃、第2子を妊娠したことがきっかけでした。出産のため実家に帰り、1カ月ほど自宅を空ける予定だったのですが、その間も自宅にお客様やスタッフが出入りするのは難しいと考え、店舗を構えようと決めました。お腹が大きい状態でテナントを探し、産後に本格稼働しました。でも、店舗を出して3カ月でスタッフが全員辞めてしまって……。
――え!それはなぜ?
自宅サロンの頃から来てくれていた業務委託の方が、広い空間で複数のスタッフと働くことに抵抗があったり、それぞれ独立を考えていたりしたことが理由でした。
その後は採用に力を入れながら、お客様に迷惑をかけないよう、シッターさんに子どもをみてもらって自分も施術に入りました。保育園の待機期間には週3日ほど現場に出て、その後、子どもが認可保育園に入れたことで、本格的に復帰できるようになりました。
――経営はうまくいきましたか?
経営自体は少しずつ軌道に乗っていきましたが、採用は苦労しました。ネイル業界では、3人ほど採用して1人残ればありがたいという状況で、サロンのコンセプトと合わなかったり、技術や接客が足りなかったりして辞める方もいました。一方、残ったスタッフのなかには、月100万円を超える売上を上げる人も出てきました。
転機になったのが、未経験で採用したあるスタッフの退職です。性格もよく、技術も上手だったのですが、私の集客力が足りず、十分にお客様に入ってもらえませんでした。結局、「もっと稼げるところに行きます」と辞めてしまって。そこで、それまでの集客方法には限界があると感じ、抵抗のあったホットペッパーへの掲載を決めました。デメリットを補えるようページの見せ方や発信を工夫すると集客ができるようになり、採用さえできればスタッフにお客様を任せられる体制が整っていきました。
そんななか、「この子ならできそうだ」と思えるスタッフが出てきました。店長の下で少し遠慮しているようにも見えたので、「店長をやってみない?」と声をかけ、2店舗目を出しました。その後、同じビルの下の階が空いたため、そこも抑えて広尾店を拡張、増室しました(現在は更に恵比寿にも増店し3店舗となります)。
――すごい!順調ですね。
ただ、店舗が増えると、自分が店を行き来する分、体力的な負担も増え、経費が倍になっても利益は倍にはなりません。現場の状況も把握しづらくなり、スタッフ教育にも課題を感じるようになって迷宮に入っていたところで、北原さんと出会ったんです。

北原さんのアドバイスを受け、わずか2年で年商が3倍以上に

――北原さんを知ったのはいつですか?
美容室経営者の鈴木勝俊さんのメルマガで、北原さんのお名前を見つけたんです。そこで紹介されていた北原さんのURLを開き、用意されていた資料や考え方を見て、「この人は別格だ」と感じました。それまでの講師や本での学びとは全然違って、考え方が整理されていて、自分が何となくやってきたことも、きちんと言葉で説明されていると感じました。当時私のなかでは「自分が現場にいないとサロンは回らない」という結論になっていた時期で。マニュアル経営や仕組み化という考え方に強く惹かれ、2021年に「北原の精神と時の部屋」(※)(現在のUBM)に入りました。
※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。
――北原さんと初めて話したときのことは、覚えていますか?
当時、北原さんが代官山でバーベキューや壁打ち会を開催していて、勇気を出して参加しました。その日は列に並ぶ形で、一人5分~10分ほど壁打ちをしていただいたんです。並んでいる間に、ゴールがない人は全員ダメ出しされていることに気づいて、「自分にはゴールがない」と焦って。そこで、年商2000万円、手取り1000万円という数字を考えました。
北原さんに「今はいくらなの?」「ゴールに到達するには、あと何人スタッフが必要なの?」と聞かれながら答えていくと、「じゃあ、もうできてるじゃん。答えを自分で持っているの、気づいてる?」と言われました。さらに、壁打ちする中で残っているスタッフは私が採用・教育した人、辞めたスタッフは店長に教育を任せた人だと分かりました。そこで、「藤岡さん自身が採用して教育すれば立ち上がる。1年か1年半で目標の年商にいけるよ」とアドバイスをいただきました。
――その後、実際にどうなりました?
自分では答えが分からないから北原さんに聞きに来ているんだから、言われたことを信じてやってみようと思いました。そしたら2022年には年商が1,600万円ほどから3,000万円ほどに伸び、その翌年には6,000万円ほどまで伸びて。本当に言われた通りの結果になったんです。
――驚きました……!他にも、変化したことはあります?
どうすればいい人が集まって、店長さんたちが辞めずに続けてくれるかをこれまで以上に考えるようになりました。スタッフとの関わり方も、本当に大事なことは伝えますが、それ以外は任せて信じる。店長さんたちがのびのび働ける距離感を意識しました。ただ何でもスタッフに合わせるのではなく、サロンのコンセプトからずれそうなときは確認する。任せながらも、オーナーとしての軸は持つことが大事だとだんだん分かってきました。


お店のスタッフさんと
UBMの講師として、コンサルでも実績を出し活躍する日々

――藤岡さんはUBMの講師としても活躍していますよね!
2024年にUBMの講師としてお声がけいただきました。講師を受けるかどうか悩みながら、北原さんに「夜や土日は家族との時間を優先したい」とお伝えしたら、「やり方は自分で決めていい、結果を出せればいい」と言っていただいて。それならご一緒できますとお返事しました。家庭を大事にしながら講師もできるという形に北原さんが歩み寄ってくださり、本当に感謝しかないです。
――コンサルもしていると伺いました。どのような方をサポートしているのですか?
一人サロンから店舗展開を目指す方や、スタッフの育成、経営に悩む方をサポートしています。集客数やリピート数、単価、経費について聞いていくと、そもそも人を雇うべきではない状態の方もいるんです。「集客ができない」と思っていても、本当の課題は別のところにあることもあって。経営の構造なのか、スタッフとの関わり方なのか。その方自身が気づいていない課題を見つけてお伝えするのが、私の一番の仕事だと思っています。
――実際に、コンサルを受けた方の実績を教えてもらえますか。
北原孝彦アカデミー(※)の生徒さん・加藤広子さんは、最初にお会いしたときはまだ独立するかどうかを迷っている段階でした。自宅サロンか店舗かという相談から始まり、テナントの探し方、予算感など一緒に考えていくうちに、1年以内に月商110〜120万円を一人で超えたんです。その後採用・面接の仕方もアドバイスして、スタッフも今育ってきている状況です。
※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。
FCだと、小茂田さんが印象的です。加盟前は月商39万円で、朝から夜10時までお子さんを抱えて働いていて。メニューもお客様の言いなりで、何でも対応していた状態でした。FC加盟後にターゲットとコンセプトを絞り、単価もうちの水準に合わせた結果、3カ月で月商80万円を超え、その後100万円を達成されました。北原さんと私、小茂田さんで、栃木という地方でも結果が出るのか確かめながらの挑戦だったので、無事に達成できて本当に嬉しかったです。


家族を最優先にしながら、経営者であり続けるために
――子育てと経営の両立は、どのようにしてきたのですか?
土日は基本的に家族のための時間にして、夜も子どもが寂しい思いをしないよう、なるべく家にいるようにしています。子どもの宿題や勉強、塾や習い事の送迎は夫にも手伝ってもらっています。家事も、食器洗いや料理など、私が苦手なことは夫にお願いしています。それでも手が回らないところは、お金を使って人に助けてもらっています。仕事でも同じです。
家族とのルールを守りながら事業を広げるために、スタッフに任せる仕事を増やして手当をつけたり、給与計算は外注したり、SNS運用は妹にお願いしたりしています。自分のキャパが小さいことを認めて、何かを増やすなら、どこかにしわ寄せがいかない仕組みをつくる。そうやって、自分がいなくても回る仕事を少しずつ増やしてきました。
――最初から、うまく両立できていたのでしょうか?
いえ、夫とは何度もぶつかりました。仕事が増えると、「自分がいなくても家族は回るだろう」と、つい家族に甘えてしまうところがあって。夫から「サロンをやめろ」と言われたことも一度や二度ではありませんでした。でも、喧嘩して終わりでは何も変わらないので、自分が変わるしかないと思いました。家族に寂しい思いや迷惑をかけないように行動するようになると、夫も少しずつ変わってきて、以前より応援してくれるようになったと感じています。

――これから藤岡さんが目指していることを聞かせてください。
直営店は、自分がいなくても回る仕組みをつくってきましたが、少し仕組み化しすぎた部分もあると感じています。これからはサロンの温かさも大切にしながら、店長さん自身が後輩を育て、「ここで長く働きたい」と思ってもらえる組織をつくりたいです。
そのために、役職者さんやコンサル生、FCオーナーさんたちにも、考え方や人への伝え方、スタッフとの接し方や育て方など、自分が学んできたことを伝えていきたいと思っています。オーナーさん一人で売上をつくるのではなく、その下のスタッフも育ち、さらに子FC、孫FCのように人の輪が広がっていくのが理想です。
また、子どもたちにも、いつか私の仕事や生き方を理解してもらえたらうれしいです。私はネイルや仕事を通じて人に喜んでもらうことが好きだから続けてきたし、それが成果にもつながったと思っています。だから子どもたちにも、自分で見つけた好きなことを一生懸命やり、それを人のために続けていれば、自分にも返ってくる。そんなことをいつか感じてもらえたらと思っています。
取材を終えて
正直に告白しますと、数年前までは北原さんのところで学ぶ人は「人生でビジネスが最優先!」「ド根性!馬力!」というタイプばかりが集っていると思っていました。
でも藤岡さんの話を聞いて、驚きました。「土日は家族優先」「夜も子どものために家にいる」。家族を大切にしながら、自宅サロンから9店舗まで広げてしまう。まさに子育て中の経営者の鏡だと思います。ビジネスと家族を、両立させる生き方があるのだと教えてもらいました。
(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)
※掲載情報は2026年7月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。

