【オーガニックカラー美容室|長田美奈】髪も人も「育む」。スタッフ全員離職の先に辿り着いたブレない経営の軸

愛知県名古屋市を中心に、髪や頭皮に負担をかけないオーガニック美容室「tendre(タンドル)」をはじめ、自まつ毛を育むアイサロン、肌の土台を作るエステサロンなど「美と健康」の事業を多角的に展開する長田さん。自社開発のオリジナルヘアケア商品も反響を呼び、現在はサロン経営者向けのコンサルティングも行っています。

一見すると順風満帆に見える長田さんのキャリアですが、過去には自身を襲った重度のアレルギー症状や、長年心身を削られた組織の人間関係トラブル、そしてスタッフの「全員離職」という壮絶な経営危機がありました。

長田さんが北原孝彦氏らとの出会いを経て「理念を歪めない、離職率ゼロの組織」を確立するまでの軌跡と、関わるすべての人を「育む」長田さんの温かい想いをお届けします。

髪と頭皮に優しいオーガニックヘアケアサロン「tendre(タンドル)」

――まずは、現在展開している事業について教えてください。

愛知県名古屋市を中心に、美容室「tendre(タンドル)」、まつ毛カールのアイサロン「キャリアカール」、ハーブピーリングのエステサロン「Amier-toki(エメトキ)」を経営しています。また、最近は月に一回、サロンオーナーさんなどに向けたグループコンサルティングも行うようになりました。

――複数の事業を手がけているのですね。まずは美容室「tendre」について詳しく教えてください。

「tendre」は、私が20年間経営している美容室です。フランス語で「優しい」という意味があり、髪にも頭皮にも負担になることは一切しない、という想いを込めて名付けました。人や地球に優しいだけでなく、まずは「髪と頭皮を育む」という観点で、徹底してやさしさを取り入れたサロンを作りたいと思ったんです。

そのため、オーガニックカラーを豊富に取り揃えています。よく知られるヘナカラーをはじめ、合成界面活性剤を使わない香草カラー、一回でアッシュ系の色を出せる色葉カラー、オーガニックでありながら黒髪を明るくできるノンジアミンカラーなどを用意し、体質や希望に合わせて選べるようにしています。

――どのような悩みを持つお客様が多いのでしょうか?

50代以上の女性が圧倒的に多いですね。他店でカラーをして頭皮が痒くなったり、かぶれてしまったり、トラブルを抱えてお越しになる方がほとんどです。

そうした方でも、2回、3回施術を受けていただくなかで何が合うのかを一緒に探し、痒みや痛みの原因を突き止めて回避することで、安心して通っていただいています。私を含め、キャリア25年以上の女性ベテランスタイリストが完全マンツーマンで向き合い、徹底的なダメージレス施術を行うことを大切にしています。

――カラー以外にも、こだわりのメニューはあるのでしょうか?

はい。5000年の歴史を持つ予防医学に基づいたアーユルヴェーダの考え方を取り入れたヘッドスパを行っています。一般的に分かりやすいように「オイルスパ」と呼んでいますが、質の良いアーユルヴェーダのオイルを使うことで、非常に高いデトックス効果(排毒作用)が得られるのが特徴です。妊婦さんや授乳中の方は避けていただくほど、マッサージだけで内側に溜まっているものをしっかり外に出してくれます。

――メニューが豊富で、初めての方は自分に合うメニューがどれか迷ってしまいそうです……!

そうなんです。お客様がご来店前に「自分がヘナで染めるべきか、色葉カラーが良いのか」を判断するのは難しいんですよね。病院に行く前に「私は風邪です」「インフルエンザです」と正確に自己診断できないのと同じです。

そのため、事前にメニューを決めるのではなく、2時間などの「時間枠」だけで予約を取っていただいています。初回は30〜45分ほど時間をかけ、病院の「初診」のように詳細なマニュアルに沿ってカウンセリングを行います。

過去に合わなかった経験から「自分はジアミンアレルギーだ」という方もいますが、実はそうではなく、思い込みの場合もあります。誤解を一つひとつ紐解き、本当に合う最適な施術をご提案しています。

多角的に広がる「美と健康」へのアプローチ

――アイサロンや、エステサロンへのこだわりも教えてください。

どちらも、美容室と同じく「優しく育むこと」にこだわっています。

アイサロンで行うまつ毛カールでは、強力な接着剤やパーマ液による顔周りのアレルギーや腫れを防ぐため、パーマ液を使わず、美容液だけでカールをかけて自まつ毛を「育む」独自技術を採用しています。 

エステサロンの「Amier-toki」は、大人の女性に向けたハーブピーリング専門店です。ハーブピーリング専門店の一つであるEMILUCA社の商材と、私のこれまでの知識を掛け合わせ、お肌の土台を強化して「荒れにくい肌」を育むことを目指しています。

――さらに、自社でオリジナルのヘアケア商品も開発しているのだとか?

はい。コロナ禍で、遠方から通ってくださっていたお客様が来店できなくなったことがきっかけで、商品開発を始めました。ご自宅でも理想のケアを再現できるようにと、「私のシャンプー」や「私のトリートメント」などを開発したんです。使っていただいたお客様からは「抜け毛が激減した」「髪質が根本から変わった」と嬉しいお声をいただいています。

――グループコンサルティングについても教えてください。

店舗にお越しになるお客様やスタッフ以外の方にも、ご相談やご質問をいただく事が増えて、Zoomでの相談会を開催するようになりました。

サロンオーナーさんをはじめ、整体院の方や占い師さんなど、さまざまな業種の方が参加してくださっています。技術的な相談だけでなく、リピート施策や採用、さらには人生相談まで、幅広く何でもお答えしています。

重度のアレルギーと、東洋医学・アーユルヴェーダへの目覚め

――長田さんは、いつから美容師を目指しはじめたのでしょうか?

中学生の頃です。「手に職をつけて、人に喜ばれる仕事がしたい」と思い、高校卒業後に専門学校へ進み、19歳で就職しました。

ただ、高評価をいただいた学生時代とは真逆に、それらの内容は就職先の求める内容ではなかったようで……。あまりの実力不足に、就職先では周りとの技術の差に直面しました。最初から完全に「落ちこぼれ」「問題児」扱いでしたね。パーマを巻くのも遅く、シャンプーをすれば「意気込みが強すぎて、力が入りすぎ」と怒られる始末でした。

――苦労からのスタートだったのですね。それからはどのようにキャリアを積んでいったのですか?

就職した美容院では、9年半働きました。24歳のときには「川島文夫杯」というカットコンテストで優勝したんです。会社から「本気でやれ」と釘を刺され、先輩でも獲得できなかった優勝だったので嬉しかったのですが……。皮肉なことに、これを機に職場の人間関係や立場が店長となり責任などから、急速に手荒れや肌荒れが悪化し、お客様からも「大丈夫ですか?」と空気感だけでも心配されるほどの深刻さでした

強いストレスを感じるなか、会社指定の化粧品やヘアカラーを無理して使い続けた結果、耳の裏まで真っ赤に腫れ上がり、全身に湿疹ができる重度のアレルギーを発症してしまったんです。精神面から来る蕁麻疹も出るなど、心身ともに限界の状態でしたね。

――そんなことが……。その後、どのようにしてその状況を乗り越えたのでしょうか?

当時会社で任されていたエステ部門の勉強をするなかで、東洋医学や伝統医学・アーユルヴェーダに出会ったのが大きな転機でした。痛みを薬で抑えるような一時しのぎではなく、根本から改善していくという考え方を知り「これで生きていこう、もっと追求したい」と強く思ったんです。

心と体、肌と髪はすべてつながっています。私と同じように苦しむ方を救うため、自分の信じる施術を提供できるサロンを作ろうと決意し、28歳で独立して「tendre」を開業しました。

――ご自身の信じる施術を、どのように探求していったのでしょうか。

本当に髪と頭皮に良いものを求めて、まずは「ヘナ」にたどり着きました。独立前後から200社以上のヘナを自分の髪で実験・検証していたんです。

1年ほど探してようやく『これだ』と思えるヘナに出会い、品質を自分の目で確かめるため、30歳のときにインドの収穫畑や工場まで直接視察に行きました。一般的な観光地には行かず、ただ畑を見て、製造工程を確認し、アーユルヴェーダを体験しましたね。そこで実際に効果を体感したことで、「やっぱり自分の方向性は合っている」と確信できました。

――徹底的に探求されたんですね。その結果、お客様にはどのような変化がありましたか?

今まで「カラーをすると痒い」「髪が細くなってボリュームが出ない」と悩んでいたお客様が、施術を重ねるごとに頭皮がほぐれ、髪が潤って元気になっていきました。結果がはっきりと出るので、お客様からも大変喜ばれています。

 私自身も、独立して自分の信じるものを提供するようになってからは、重度のアレルギー症状は一切出なくなりました。

ホワイト企業認定が招いた苦悩。北原氏と出会い取り戻した「経営者の軸」

――独立後は、経営は順調に進んでいたのでしょうか?

売り上げ自体はずっと右肩上がりでした。しかし、長年にわたって「人」の問題に深く悩まされていて……。スタッフの離職や仕事のボイコット、不満の噴出などが続き、精神的にはかなり追い詰められていました。

――それは辛いですね……。何が原因でそのような状態になってしまったのでしょうか?

一つのきっかけは、国が認める「ホワイト企業認定(ユースエール)」を取得したことでした。良かれと思って環境を整えたのですが、一部のスタッフがそれを自分たちの都合の良いように解釈してしまって。「ホワイト企業なのだから当日欠勤してもいいですよね」「遅刻してもいいですよね」と、ルールが完全に崩壊してしまったんです。

――認定が裏目に出てしまった?

はい。毎日のようにスタッフから、制度やルールを変更して欲しいと言う相談と言う名目のクレームや不満が続きました。

一番辛かったのは、育休中で働いていないスタッフから約3年近く産休育休が続いている状態でも復帰するために会社のルールを変更して欲しいなどの要望が絶えず、挙句の果てには労働基準監督署に行かれたりしたときです。「どうして働いていないのに労基に行くのか」と、完全に私自身の精神がおかしくなるほど、追い詰められた壮絶な日々でしたね。

――そこから、どのように現状を変えていったのでしょうか。

北原さんに会いに行きました。2017年頃からYouTubeなどで拝見し、その「人を見る力」に惹かれていたんです。最初に直接お会いしたのは、2019年7月に名古屋で開催された「北原メシ」(※)という交流会でした。

※北原メシ:「北原の精神と時の部屋」の前身となったビジネスコミュニティ。北原孝彦を囲って食事をしながら、事業つくりにキーポイントとなる3要素、プロダクト、マーケティング、経営を学ぶ会。

――そのときは、どのようなお話をしたのですか?

実は当時、組織の問題でもうお手上げ状態で「北原さんの美容室『Dears』にフランチャイズで入れてください、もう楽になりたいです」と相談したんです。ところが、あっさりと断られてしまって。

つい最近になって当時を振り返ったとき、北原さんから「あの頃の長田さんは悲劇のヒロインになっていたから、見守るしかできなかった。僕のDearsではなく、自分で乗り越えないといけない状態だったでしょ」と言われました。本当にその通りで、当時は大変な状況を自分自身で作ってしまっていたんです。

――そこから、どのようにUBM(※)の入会に至ったのでしょうか。

一度フランチャイズを断られた後も、北原さんがゲスト登壇される別のセミナーなどに参加して学び続けていました。そして2021年の8月に北原さんの精神と時の部屋(※)(現UBM)に入会し、11月には顧問契約を結んで、直接サポートしていただくことになったんです。

※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。

※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。

――顧問契約を結んでから、長田さんご自身の意識はどう変わりましたか?

私がスタッフに合わせすぎて、経営者としてのルールを自分で歪めてしまっていたことに気づかされました。北原さんから「長田さんはすでに素晴らしい軸を持っているのだから、それをスタッフの言葉で歪めないでください」とはっきり言っていただき、本当に強く背中を押されましたね。そこから、誰かが何かを言ってきたからといってルールを変えずに、自分の理念をどしっと構える覚悟が決まったんです。

ミスマッチのない「離職率ゼロ」の理想的なチーム作り

――覚悟が決まってからは、具体的にどんな行動を起こしたのでしょうか?

まずは「ホワイト企業とは何か」というルールを徹底的に言語化して、マニュアルを作りました。さらに、北原さんの一声で、スタッフとの日常的なやり取りを私が直接行わず、公式LINEを通じて行うようにしたんです。UBM顧問の関さんが第三者として対応を代行してくださることになり、私の精神的な負担が激減して、一歩引いて毅然と対峙できる環境になりました。

――顧問の方々のバックアップが大きかったのですね。

さらに、北原さんマネージャーの山田慶さんにも大変救われました。当時、一番不満を言い続けていたスタッフが辞める直前の面談音声を、山田さんに聞いていただいたんです。

すると「今まで300店舗以上見てきたけれど、こんな理不尽な人は見たことがない。それに毅然と対応できている長田さんは素晴らしいですよ」と太鼓判を押してくださって。

普通なら「ありがとうございます」と言ってもらえるはずの対応にすら、ずっと文句を言われ続けていたので、その言葉でようやく経営者としての自信を取り戻すことができました。

――その結果、組織はどのように変わったのですか?

実は、ルールの捉え方がそれぞれで相違が生まれないように徹底した結果、いつもご自身の都合の良い捉え方をしていたスタッフが全員一気に退職するという荒波を経験しました。しかし、それで完全に組織をリセットできたんです。

それ以降は、面接の仕方を大きく変えました。サロン見学にじっくり時間をかけ、私が長年学んできた心理学の知識を面接のヒアリング項目に落とし込むなど、ミスマッチが起きないよう入り口を徹底的に整えました。

――仕組みを変えたことで、どんな方が入社するようになりましたか?

「この環境を作ってくれて、ありがとうございます」と感謝を伝えてくれる、優しい方ばかりが集まるようになりました。以前は仕事のボイコットなどを経験していたので、信じられないほどありがたいです。

現在はベテランのスタイリストが集まってくれているのですが、お互いに感謝し、リスペクトし合えるよい関係性が築けています。スタッフが全員入れ替わってからは、「離職率ゼロ」の温かい環境がずっと続いています。

――それはとても嬉しい変化ですね!ご自身の体調にも変化はありましたか?

私自身を長年苦しめていた重度のアレルギー症状から解放されました!深夜や明け方もスタッフからの連絡でLINEが鳴り止まなかった頃からすると適正な睡眠もとれ、営業中の急遽補填にまわる仕事も無くなり、自分の決めた通りのスケジュールにする事ができたのもあり、心身のバランスをとれるようになったからだと思います。

気づけば、食べ物のアレルギー反応が減っていました。そして「なんだか若返ったね」と、お客様に肌艶まで褒めていただくようになったんです。心と体、両方が整ってきたからかもしれません。長年通い続けてくださるお客様からは日々あたたかい言葉をいただいています。

そんな大切なお客様をこれからもお迎えし続けたい。この思いで、素敵なスタッフたちと共に環境を整えて、チームの輪が広がっています。

自分の経験を周りに還元したい。長田さんが目指す未来

――最後に、長田さんが今後、実現したい未来について教えてください。

大きく分けて3つあります。一つ目は「オーガニックカラーは難しい」という常識を変え、世の中から髪を染めることで悩む人をなくすこと。

二つ目は、結婚や出産といったライフイベントを迎える女性美容師が、安心して長く働き続けられる環境を守り抜くこと。

そして三つ目は、私が20年間苦しんで培った組織作りの経験を、同じように悩むサロン経営者の方へ還元していくことです。

――ご自身の経験を、関わる人たちへ広く還元していくのですね。

はい。美容室では髪と頭皮を、アイサロンではまつ毛を、エステではお肌を、そしてグループコンサルティングでは「人」を育んでいます。

北原さんからは「長田さんの事業に対しての想いや考え、人に向き合う姿勢を教えてあげてほしい」とよく言われます。最近はその意味が分かるようになってきました。

お客様やスタッフ、そして共に学ぶ仲間たちと「共に人生を歩み、お互いを育み続ける関係」を築くこと。それが私の経営と人生の原点であり、これからも大切にしていきたい想いです。

◆オーガニックカラー美容室|長田美奈

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取材を終えて

長田さんは、痛みから絶対に逃げない人です。若い頃の重度のアレルギーも、経営者になってからのスタッフとの軋轢も、まっすぐに向き合って乗り越えてきているんですよね。

なかでも印象的だったのが、スタッフが全員一気に辞めてしまったエピソードです。普通なら落ち込みそうなところを、長田さんは「組織を完全にリセットできた」と前向きに捉えていた。そこから今の「離職率ゼロ」の温かいチームができたと聞き、痛みの先にはちゃんと変化があるんだ、と励まされました。

(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)

※掲載情報は2026年6月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。