【鍼灸・整体師|安田時朗】月150万円の赤字、3000万円投資も失敗……崖っぷちの鍼灸・整体師が「人生に伴走する施術」にたどり着くまで

愛知県名古屋市・中村公園で「つるかめ鍼灸整体院」を営む安田時朗さん。肩こりや頭痛などの不調に対し、痛みを和らげるだけでなく、骨格のゆがみや姿勢の乱れといった原因にも目を向け、一人ひとりの目標や理想の暮らしまで見据えながら寄り添う施術を行っています。

現在は整体院の運営に加え、整体関連の商品開発の監修なども行う安田さんですが、ここに至るまでの道のりは平坦ではありませんでした。夜の仕事に就く人たちの健康を支えたいという思いから名古屋・錦で店を立ち上げたものの、経営は苦戦。毎月100万〜150万円の赤字を抱えた時期もありました。

そんななかで北原孝彦さんのYouTubeと出会い、救済企画への出演。仕事への向き合い方や家族・患者との関係も大きく変わっていったそうです。痛みを取るだけではなく、その人の人生に伴走する施術者へ。安田さんのこれまでの歩みを聞きました。

痛みを治すだけでは終わらない!その先の夢を叶える施術

つるかめ鍼灸整体院のHP

――ホームページInstagramを拝見しましたが、「つるかめ鍼灸整体院」のイメージが湧く内容でした。

ありがとうございます。ホームページにも書いている通り、うちでは症状を聞くだけでなく、歩き方や立ち姿を動画・静止画で確認し、ベッドでの検査も行って痛みの原因を見極めていて。初回はカウンセリングと検査を含めて2時間ほどいただいています。

――2時間⁉ かなり長いですね。

細かくお話を伺い、痛みの原因を明確にします。というのも、痛みだけを取っても、生活習慣や普段の癖でまた歪みが出て元の状態に戻りやすい。なので、その場しのぎではなく、再発しにくい体づくりまで大事にしています。

――どうやって歪まない体を作るのでしょうか?

まずどういう方向で治していくかカリキュラムを組んで、一度施術した後にその変化がどれくらい残るかを見る。施術の効果はだいたい1週間ほどなので、その間にもう一度来てもらい、変化率を見ながら今後の治療スパンを決めていきます。それと、うちでは治療の際にお客さんの「夢」も聞いているんです。

――夢?

例えば「子どもと一緒にディズニーランドに行く時に、痛みなく歩きたい」などの身近で具体的な目標ですね。

これには再発防止の意味もあって。例えば「腰が痛い」と来られて、腰痛だけが治ったら通院は終わりますよね。でも、その痛みが姿勢から来ていて、「結婚式までにきれいな姿になりたい」という目標があるなら、痛みの先にある理想に向けて通ってもらえる。

――夢と結びつけることで、通い続ける意味が自分の中ではっきりすると。

そうなんです。さらに飽きないように、毎回「前回の答え合わせ」と「次回予告」をお話ししていて。今どこにいて、これから何をしていくのかを伝えることで、段階を踏んで進んでいる感覚を持ってもらえるようにしています。

「ここならば……」生涯の伴走者として患者の期待に応えたい

――カリキュラムの流れも教えていただけますか?

基本的には週1回ペースで、カリキュラムは基本的にオーダーメイドです。例えば肩こりが骨盤の歪みから来ている場合だと……。

――え? 肩こりなのに骨盤が関係あるんですか?

はい。骨盤が歪むと猫背になり、首やお腹が前に出て、反り腰になって肩こりにつながることもあります。なので施術の際にはまず原因を説明し、まず肩こりを取り、その後、骨盤や背骨、肩甲骨、首、お腹の位置を整えていく。そうやって、肩こりが再発しにくい骨格を作っていきます。

――ただ、きれいな骨格を作っても、先ほどおっしゃったように生活習慣や普段の癖でまた歪んでしまう可能性もありますよね。

だから、生活習慣に負けないようなインナーマッスルを作ることが重要で。ただ、人によって最初から持っている量が違うので、一度インナーマッスルの検査をしてから、施術をしていく。その後は月1回のメンテナンスさえすれば、仕事や育児をしても歪みにくい体を保てます。

――ちなみに、インナーマッスルってどう施術するんですか。

専用の機械があって。インナーマッスルに電気を当てると、30分で腹筋9000回分と同じくらいの刺激が入り、鍛えていきます。

――すごく丁寧なカウンセリングと、やりたいことを叶えるという視点。痛みの改善だけでなく、その先まで見据えているんですね。

基本的に患者さんってジプシーなんですよね。「ここならどうにかしてくれるかも」と期待をして、いろいろなところを回った末に来てくださっていると思うんです。だからその期待には応えたい。生涯の伴走者として、安心できる存在になれたらと思っています。

「社会に出なきゃダメだよ」師匠の言葉を信じて他業種へ

――安田さんご自身のこれまでについて伺います。鍼灸・整体に興味を持ち始めたのはいつごろでしょうか。

高校のころ、友達が「これから高齢者が増えるし、鍼灸をやれば食いっぱぐれないんじゃない」と言ったんで、「本当だね」と思って。それで卒業後に中和医療専門学校に通い、鍼・灸・あんまマッサージ指圧の三つの免許を取りました。一度フリーターも挟みながら、計6年通いましたね。

新卒時代の安田さんと師匠の中辻正さん

――卒業して働き始めたのは何歳の時なんですか。

24歳の時です。セラピストの中辻正先生という方のところに就職させていただいて。すごく厳しい方で、夜遅くまで患者さんを診たり練習したり、休みもほとんどないような環境で3年ほど勤めました。

そのあと、知り合いの社長さんが「治療院とエステを同じ店舗の中でやりたい」と言われて、治療院のほうの店長として働きました。ただ師匠のある言葉が引っかかっていて。

――ある言葉?

中辻先生からは「社会に出なきゃダメだよ」と言われていました。治療の世界だけにいると、営業で歩き回る人や事務仕事で座りっぱなしの人のつらさも、実際に知らないと本当の意味では寄り添えない。その言葉もあって、32歳ごろに知り合いが人事部長をしていたオール電化の会社に入りました。

安田さんと師匠である中辻正さん

――全く別の業種でも働いていたのですね。

最初の1年半は人事で中途・新卒採用に関わり、説明会や個別面談なども担当。その後の1年半はオール電化の営業をしていました。

「これ以上、自分を偽ることはできない」利益優先の方針に反発し、独立へ

営業時代の安田さん

――他業種を3年くらいやられて、その後どうされたんですか。

ある鍼灸接骨院に入り、半年でグループ全体をまとめる総院長になりました。ただ、当時の社長はかなりお金儲けに振り切っていて、ベテランでも新卒でも患者さんには技術の違いなんて分からないのだから、どれだけ上手にお金をいただけるかが大事だ、という考え方でした。

でも僕は師匠から最初に「高額をいただくなら、それを上回る価値を与え続けることで患者さんに貢献しなさい」と教わりました。実際、師匠は1時間3万円、1時間半5万円の治療をしていたんですが、3〜4か月先まで予約で埋まっていたんですね。

――お金をいただくならば、対価に見合った価値を提供すべきだと。

そうです。だからその会社とは何度もぶつかって。最後は「これ以上、自分を偽ることはできない」と言って辞めました。その後、独立して10年くらい鍼灸接骨院をやって、そのあと下の子に譲り、錦へ行きました。

――名古屋でも有数の繁華街である、あの?

はい。錦は夜の仕事をする方たちが多くて美容を支える場所は多い。一方で健康を支える場所は少ないと感じたんです。例えば生理が止まったり、メンタルを崩したりする方もいる。そうした人たちを支えたいと思い、「Body care salon Salute」というお店を出しました。

内装と機械で3000万円くらい使い、家賃も高い。損益分岐点が月200万円くらいだったんですが、全然うまくいかなかった。

Body care salon Salute
Body care salon Salute

――その頃に、北原さんの救済企画に出られたんですよね。

そうです。何をやってもうまくいかなくて、毎日「何かないかな」とYouTubeで調べていたんです。そしたら北原さんの動画が出てきて。北原さんは圧倒的な成功者なのに上から語るのではなく、僕らの目線で0→1、1→10、10→100の話を分かりやすく話してくれていて

この人だったら現状をどうにかしてくれる。何でもやるという思いで「北原孝彦の精神と時の部屋」(現・UBM(※1))に入りました。そしたらコロさん(※2)から「取材させてくれ」と言われて、救済企画に出させてもらった、という流れです。

※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。
※コロさん:箱崎蓮。株式会社STAGEON取締役副社長。YouTubeチャンネル「北原孝彦 -億超え社長の養成記録-」では「コロ助」として出演している。

毎月150万の赤字が救済企画で奇跡の黒字化へ

――YouTubeの救済企画の時には、北原さんからどんなことを言われたんでしたっけ。

まず「すぐ移転しろ」ということ。それから、エステもできる治療院だったんですけど、「一本化しろ。一番得意なこと、一番患者さんに喜んでもらえることに絞れ」と。それと「親と子どもを大事にしろ」ですね。

――そこまで言われていたんですね。そのあと、どうされたんですか。

それでも半年くらいは「まだやれるんじゃないか」「もうちょっと何かあるんじゃないか」と意地を張っていたんです。でも本当にどうしようもなくなって、今の場所に移って、言われたことを愚直にやったら、本当にそのままうまくいきました。

――具体的にどういう行動をされたんですか。

美容や高齢者向けの施術もやめて、姿勢矯正に特化しました。ただ、「姿勢を整えます」だけでは対象が狭いので、姿勢の乱れが影響する肩こり、腰痛、頭痛まで含めて打ち出しています。

ホットペッパーも育てました。500円ほどでモニターを募集し、意見を聞き、写真を撮り、口コミを書いてもらう。同時に競合もリサーチし、どの価格帯がいいのかをモニターに聞きながら調整していきました。

つるかめ鍼灸整体院のホットペッパーページ

――北原さんに言われたことを、愚直に行動へ移してきたんですね。

はい。あと「全体の20%だけ変更しなさい」とアドバイスされたので、うまくいっている部分は残しつつ、一部だけを変える。それを3か月ほど続けました。

――結果、売り上げは変化しましたか?

錦の時は毎月100万〜150万円の赤字でした。ありがたいことに、今の場所は損益分岐点がかなり低くて、開業当初は月13万〜14万円ほどで基本的に利益が出る状態だったんです。初月の売上は80万円くらいで、今はだいたい200万円前後ですね。

今は損益分岐点自体は当時より少し高くなっていますが、それでも赤字になることはなくなりました。

「食わせてやってるんだよ」から「幸せになってほしい」へ

安田さんと北原さん

――北原さんと出会い、安田さんの人生は変わりましたか。

めちゃくちゃ変わりました。店舗展開で失敗しないやり方ってこれなんだ、というのが分かりましたね。それに……今まで子どもには苦しい思いをさせていたので……。

本当に救われました。北原さんは、これからもずっと恩を返していきたい人ですね。裏切りたくないし、義理も通したい。僕にとっては師匠のような存在です。

――考え方が変わったというのは、何が変わったんですか。

人のことを大事にするようになりました。もちろん前から大事にしていたつもりではあるんですけど、今思うと損得で人間関係を見ていたんですよね。「この人と何かしたらどうなるか」「これを上手にマネタイズできないか」と考えていた。

今なら、ギブを100やって何%か返ってくればいいよね、という感覚も分かるんですけど、当時は1やったら1返してくれよ、と思っていたなと。

――患者さんへの向き合い方も変わりましたか?

以前は、「今月これくらいの売上が必要だよね」と考えていて、患者さんを数字として見ていたところもあったと思います。でも今は、患者さんがわざわざ時間をかけて来てくれていることに、ちゃんと応えなきゃいけないと感じるようになりました。

もちろん、毎日やっていると売上のことを考えることもあって。「この方、もうすぐ回数券が切れるな」とか。でも、売上を上げる仕組みはある程度つくったので、目の前の患者さんへの思いは分けて考えられるようになりました。思いだけだとボランティアになるし、仕組みだけだとお金儲けだけになり詐欺っぽくなる。

――ご家族に対してはどう意識が変わったんですか。

「食わせてやってるんだよ」という感覚から、「幸せになってほしいな」に変わりました。

――関係も変わりましたか。

そう思います。嫁とは喧嘩しなくなりました。今は笑いながら「洗濯の干し方が悪い」と言われるくらいです。娘も、今でもソファで隣に座って足を乗せてきますし、自分が食べているものを「おいしいよ」と当たり前のようにシェアしてくれたりします。

整体だけでなく、テレビや商品開発に大忙し

――今後、お声がけがあればやってみたいことはありますか。

今までずっと一人で、自分たちの世界だけでやってきたので、正直まだ分からないです。ただ、新しい可能性を北原さんをはじめ周りの方からご提案いただけたら前向きにやりたいです。

実際、知り合いの方からテレビに関わる仕事をいただき、TBS系列『ひるおび』内で放送されているテレビショップ番組『キニナルチョイス』では、僕が監修した「rakuna 整体スニーカー2」が紹介されました。

rakuna 整体スニーカー2

――テレビの出演だけでなく、靴の監修までされているんですね。それもやっぱり姿勢の観点からなんですか。

そうです。今、姿勢を良くするための商品の開発も手伝っていて、インナーや家でできるホームケア系の商品もいくつか監修しています。これからどんどんリリースされていく予定です。

――整体院だけじゃなくて、他のお仕事も少しずつ増えてきているんですね。

依頼をいただいたことに応えているだけで、自分から「これをやりたい」と広げているわけではないんですけどね。最近は整体セミナーも開催していまして、これからさらに力を入れていきたいと思っています。

――最後に、今後やっていきたいことは何でしょうか。

やっぱり店舗展開ですね。今は1店舗です。目標は5店舗ですね。基本的には愛知県内で、目の届く範囲で。そこでうまくいったら、FC展開にもつながればいいなと思っています。

店舗を増やしていくなかで、僕みたいに、仕事を通じて人生がいろんな意味で豊かになる人も増えていったらいいなと思っています。自分に対する自信だけじゃなくて、世の中への貢献とか、家族に対する自信とかがついてくると思うので。そんな豊かな人生を送る整体師さんが増えていったらうれしいですね。



取材を終えて

安田さんのお話を伺い、何より響いたのは「選択と集中」の偉大さです。整体にプラスして、夜職のみなさんに喜ばれるサービスもやってみよう、しかも内装もきちんとお金をかけて…とついつい手を広げてしまう気持ち、よく分かります。

でも、「姿勢」に特化することで、整体だけでなく開発の仕事にまで広がっていった。やっぱり原理原則を守りながら、泥臭くコツコツがんばるのみですね。そして成果が出たのは、安田さんが北原さんの教えを愚直に守ってきたから。素直さというのもまた大切なことなんだなと改めて感じました。

「患者さんのために」という言葉はよく聞きますが、安田さんの場合はその熱量が違います。本気で向き合う姿勢を感じるのです。こんな整体院はなかなかない……!つるかめ鍼灸整体院さんのFC展開への挑戦、心から応援しています。

(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ)

※掲載情報は2026年4月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。