【美容室・アイラッシュサロン経営|山口剛広】「変わっていく姿にやりがいを感じる」7店舗経営を経てたどり着いた、人を育てる経営術

埼玉県で、髪質改善専門サロン「Dears(ディアーズ)」3店舗と、アイラッシュサロン「Frillnature(フリルナチュール)」4店舗、計7店舗を経営する山口剛広さん。フランチャイズ加盟から7年目の2025年は、年商1億5000万円超を見込むまでに成長しました。

髪質改善に特化した施術や、まつ毛・眉のトータル提案など、お客様一人ひとりに寄り添いながら事業を拡大。現在は現場を離れて経営に専念するほか、美容室経営者の相談会や、カウンセリング講習会などにも取り組んでいます。

山口さんが大切にしてきたのは、売上を伸ばすことだけではありません。スタッフが安心して長く働き続けられる環境を整え、それぞれが自分らしく力を発揮できるよう支えてきました。同時にその経験は、いまの経営支援にもつながっています。店舗展開を進める中で見えてきた“人が育つ仕組み”とは何か。山口さんの歩みをたどりながら、経営者として大切にしていることを伺いました。

現場で培った仕組みを、経営支援へ

――まず、山口さんが経営するDearsとFrillnatureについて教えてください。  

Dearsは髪質改善に特化したサロン、Frillnatureは目元美容を中心としたアイラッシュサロンです。共通しているのは、お客様一人ひとりに丁寧に向き合うことを大切にしている点ですね。あとフレックス制や週休3日制など、美容業界では珍しい働き方を取り入れているのも特徴だと思います。 

――Instagramも拝見しました。サロン運営だけでなく、経営者向けのサポートにも取り組んでいますよね。 

はい。1〜2店舗規模の美容室経営者さんや、これから雇用を始めたい方に向けて、経営相談を受けています。自分自身が7店舗まで展開してきた経験をもとに、個別相談やコンサルのような形でサポートをしています。

――具体的には、どのような相談が多いのでしょうか。

一番多いのは、スタッフのマネジメントですね。どう関係性を築けばいいのか分からない、ルールや仕組みをどう作ればいいかといった悩みはかなり多いです。あとは、求人や財務の相談、経営者ご自身のメンタル面のご相談も多いですね。

例えば求人だと、「とりあえず人を増やしたい」という状態で募集をかけてしまいがちですが、そもそも今の店舗に必要なのがアシスタントなのか、スタイリストなのか、そこが曖昧なまま進んでしまっているケースが結構あります。 

ですので一度立ち止まって、「どんなお店にしていきたいのか」「どんな人に来てほしいのか」を整理したうえで、必要な人材を一緒に考えていくことが多いですね。

――美容師向けのカウンセリング講習会も行っているそうですね。

セミナー形式で行っています。ここでいう「カウンセリング」とは、美容室で髪型や施術内容を決める時に行うものです。初回来店時のヒアリングもありますし、施術後に行うアフターケアの説明も含まれます。もともと自分が現場でやってきた内容をベースに、DearsやFrillnatureでも大切にしている考え方をお伝えしています。

カウンセリングは単に髪の状態だけではなく、お客様の悩みや希望を引き出し、施術内容を提案しながら信頼関係をつくる。そのうえで「また来たい」と思っていただき、次回予約につなげるためのものです。ですので、「なぜそのやり取りが必要なのか」といった考え方を中心に、実際の現場で再現できる内容をお伝えしています。

 美容師志望ではなかった学生時代。原点は「人に喜んでもらうこと」 

――学生時代から、美容に興味はありましたか?

髪を切るのは好きでしたね。実は、中学生の頃から友達の髪を切って、散髪代を山分けにしていました。自分の髪も雑誌を見ながら切っていたんですけど、今思うと結構ひどかったと思います。当時はベッカムヘアが流行っていて、サッカー部だったこともあって、みんな同じような髪型にしていました。ワックスでなんとか形にする、みたいな(笑)

――その頃から、美容師を目指していたんですか。 

いえ、僕は北海道の田舎の出身なので、美容室が身近にたくさんあったわけではなくて。高校時代はサッカー部だったこともあり、体力を生かせる安定した仕事がいいなと思って、高校3年生くらいまでは消防士になろうと考えていました。 

ただ進路を決める時に、消防士は人を守る仕事だけど、人が喜んでもらえる仕事の方が合っているんじゃないかという感覚があったんです 。それと、美容室に行ったときに働いている美容師さんたちが楽しそうだったのも大きかった 。正直、「合わなければ辞めればいい」くらいの軽い気持ちで美容師の道に進みました。

――高校卒業してからは美容の専門学校に入ったのでしょうか。

最初は仕事しながら通信制で美容師免許を取ろうと思っていて、全国展開している美容室に高卒で入社したんです。ただ、会社の社長から「見込みがあるから、埼玉の本社に来い」と言われて行ったら、その会社が運営している美容専門学校に入ることになりました。ちょうど定員割れしていたみたいで、同じように地方から来ている子たちも結構いました。ちょっと騙されたな、という感覚はありました(笑)

そこからは通学社員という形で、日中は学校に行って、終わったらサロンで働く。そして土日はずっと現場に立つという生活を2年間続けました。

――かなりハードな生活ですね……。 

大変ではありましたけど、結果的にはすごく良かったと思っています。現場で働きながら学べたので、技術や接客を実践の中で身につけられました。一般的には学生のうちはシャンプーやカラーを任されないんですけど、僕の場合は働きながらだったので、卒業する頃にはカット以外は一通りできるようになっていました。

――実際に続けてみて、美容師という仕事はいかがでしたか?

「やっていけるな」という感覚はありました。振り返ってみると、やっぱり髪を切ること自体が好きだったんだと思います。それと、お客様に「ありがとう」と言っていただける機会が多い仕事なので、そこはやりがいでしたね。大変ではありましたが、辞めようと思ったことは、一度もなかったです。

美容師経験を通して見えてきた、“自分にとっての幸せ” 

――その後、海外で働かれた経験もあると伺いました。 

ニューヨークで美容師をしている先輩の姿を見て、「美容師として海外でも働けるんだ」と思ったのがきっかけでした。海外に強い興味があったわけではありませんが、一度くらいは違う環境を経験してみたかった。それに当時の美容業界はかなりハードだったので、“人生の夏休み”のような感覚で一度立ち止まろうと思い、語学留学とワーキングホリデーでカナダに行きました。

現地では美容室で働きました。日本人以外の方をカットするのは初めてだったので、最初は苦労しましたね。カラー剤や薬剤が日本で使っているものと違っていたし、髪質や頭の形も全然違うので、正直かなり難しかったです。

――帰国後は、どのようなキャリアを歩んだのですか?

帰国後は、以前働いていたサロンに戻って、雇われ店長として働いていました。サロン自体は良い環境ですし、オーナーさんも働き方をしっかり考えてくれる方でしたが、帰国後から「いつかは自分で経営をしたい」という気持ちがずっとありましたね。最終的には2018年12月、Dearsに加盟して独立しました。

――独立を決めた背景には、どんな想いがあったのでしょうか。

自分が思う“幸せな働き方”を実現したいという気持ちが強かったです。当時は結婚して子どももいたんですが、美容師として働いていると土日も休めないですし、家族との時間がなかなか取れませんでした。もっと子どもと過ごす時間を増やしたい、という思いがありましたね。

あと、お金の面でも、雇われて働いているだけだとどうしても限界があるなと感じていて。経営者になれば自分の頑張り次第で収入を増やしていけるというのも大きかったです。

それと、店長をやっていた頃から、自分はプレイヤーとしてよりもマネジメントの方が向いているという感覚がありました。美容師として早いスピードで売上を伸ばすタイプではなかったんですが、スタッフを育てたり、辞めさせずに続けてもらったりすることは苦ではなかった。だったら自分で経営して、直接マネジメントをやった方が活かせるんじゃないかと思ったんです。

北原さんとの出会いが導いた、独立という決断 

――たくさんある美容院フランチャイズの中で、なぜDearsを選んだのですか? 

フランチャイズを選んだというより、北原さんという人を選んだ、という感覚に近いです。出会いは、美容師の間で話題となっていた木村直人さんのブログです。そこに北原さんの記事があり、存在を知りました。 

当時、僕の知人Hさんというメルマガを使ったコピーライティングで成功している人がいて、「文章の力ってすごいんだな」と感じていました。ただ、当時の美容業界では、コピーライティングはまだ一般的ではありませんでした。そんな中で北原さんは、すでにそのスキルを使って、美容室の集客に成功されていたので、「この人はすごい」と早い段階で感じていました。

それで2017年に長野で開催されたフランチャイズ説明会に参加したんです。ただ、その時はすぐに加盟を決めることはできませんでした。店長として働いていたこともあって、後輩を育てきってから独立したいという思いがあったからです。

――実際に加盟を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

正直、背中を押されたというより、焦りですね。北原さんの勉強会で、同じくDearsへの加盟を検討していた関直也さんと出会いました。ほぼ同じタイミングで話を聞いていたのに、しばらくしてSNSを見ると、関さんはすでに2店舗目を出す動きをしていた。「自分は何をしているんだ」と。それで一気に覚悟が決まり、独立を決めました。ですが、出だしからトラブルに見舞われて……。 

――トラブルとは?  

2018年11月に1店舗目をオープンする予定だったんですが、工事中に上の階のテナントから水漏れがあって、1ヶ月半以上止まってしまったんです。結果的にオープンできたのが12月27日で、その年は実質3日間しか営業できませんでした。

しかも原因をつくった業者さんが途中でいなくなってしまって。お金もない中で営業もできない状況だったので、正直かなり追い込まれました。弁護士さんに相談に行ったりもしましたし、夜眠れなくなって、どうしようもなくてクッションを殴っていましたね(苦笑)

――そのようなアクシデントがあっても、前に進めたのはなぜですか。

大変なこと以上に、成長できている実感が大きかったからだと思います。店舗を増やしていく中で、できることが増えていく感覚があって、それが楽しかったです。そういった経験があったからこそ、今の経営にもつながっているのかなと思います。

北原アカデミーで見えてきた、経営の本質

――北原孝彦アカデミー(※)(以下、アカデミー)には、どのタイミングで入ったのですか。

2025年の7月です。北原さんに成果報告をさせていただいたことがあって、その中で「ハサミをおいて、現場から離れられるようになりました」とお伝えしたんです。

そしたら「じゃあYouTube撮りましょう」という流れになって、その撮影中に「もっと私の近くで勉強する気はありますか?」と声をかけていただいて。「もちろんあります」と即答したら、そのままアカデミーに入ることになりました。

※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

――実際にアカデミーに入ってみて、どんな変化を感じていますか。 

これまではどちらかというと、ビジネスモデルや仕組みによってうまくいっているという感覚が強かったんですが、説明できない部分も多かったです。でも、アカデミーに入って、原理原則を学ぶようになってから、「なぜうまくいっているのか」「なぜうまくいかないのか」が、かなり明確に言語化できるようになりました。

例えばDearsフランチャイズで教えていた「ディフェンスを強くする」という考え方は、まさに原理原則に沿っていたんだなと感じています。一方で、うまくいっていない部分は「原理原則に沿っていなかったからなんだな」と整理できるようになったのは大きな変化ですね。

――ディフェンスを強くする?

リスクを取りすぎないことだと捉えています。僕はSNSなどで一気に集客して店舗を広げてきたタイプではないので、いわゆる攻撃力が高いわけではありません。むしろ、無理に売上や集客を伸ばすよりも、スタッフが辞めずに働き続けられる環境を整えることを大事にしてきました。その結果、スタッフが少しずつ増え、店舗も増えていった。お金の使い方に関しても、比較的保守的です。

――アカデミーに入るにあたって、ご家族の反応はいかがでしたか。

お金もなくて忙しかった頃から、今のように時間やお金に少し余裕が出てきた状態までずっと見てくれているので、基本的には応援してくれていますね。アカデミーに入る際にも「家族との時間が少し減るかもしれない」と話をしましたが、背中を押してくれました。

――ご家族の皆さんは、なぜそこまで山口さんの挑戦を応援してくれるのでしょうか?

家族の時間もちゃんと作っているから……ですかね。それに家族、特に妻が大事にしていることを優先的に考えて、人生設計を立てているからかもしれません。

例えば、妻は神奈川にいる母親や兄弟との関係をとても大切にしているんです。だからこそ実家で一緒に過ごす時間をできるだけ多く取ったりしています。仕事だけを優先するのではなく、妻が大切にしていることにも、ちゃんと時間やお金を使いたいという感覚ですね。

――山口さんが「北原さんについていこう」と思ったのは、どのようなところに惹かれたからなのでしょうか。

やっぱり、生き様ですね。北原さんって、楽なことをしないんですよ。本当に大変なことを、人のためにやり続けている。その姿を見ていると、自分はまだまだだなと感じます。

特に印象的なのは、目の前の人への向き合い方ですね。ここまでやるのか、というレベルで本気で向き合っているんです。例えば、スタッフに対して「俺が(あなたの)人生の面倒を見るから大丈夫だよ」と言い切っているんです。

実際に僕自身も、不安になって北原さんに聞いたことがあるんです。「もし自分に何かあったら、お店はどうなりますか?」と。すると「本部で運営を引き継いで、ご家族にしっかり還元するから大丈夫ですよ」と迷いなく答えてくれたんです。普通、そこまで責任を持つのって怖いじゃないですか。それでも即答できる。言葉に重みがあり、信頼できる方だと感じました。

人が成長し、輝いていく瞬間。マネジメントの醍醐味とは

――マネジメントの部分についてももう少し伺いたいのです。どのようなところに楽しさを感じていますか。

自分自身の成長ももちろん楽しいんですが、それ以上にスタッフが変わっていく姿を見ることにやりがいを感じます。

例えば、以前一緒に働いていたスタッフで、仕事がうまくいかず「もう美容師はやめて、しばらく何もしないかもしれない」と相談を受けたことがありました。ただ、それはもったいないと思って、「もしタイミングが合えば、うちでもう一度やってみない?」と声をかけたんですね。そこから一緒に働くことになって、徐々に売上も伸びていき、結果的に美容師の仕事を楽しめるようになってくれました。

また、シングルマザーで一度美容師を離れていたスタッフもいて。3年ほどブランクがあり、最初は技術的にも苦戦していて、うまくいかずに泣いてしまうこともありました。それでも、4年間コツコツ積み重ねていく中で成長して、2025年の12月には店舗で一番売上の高いスタッフになりました。

――すごい変化ですね。環境によって、その人の可能性が引き出されるということでしょうか。

そうですね。DearsとFrillnatureの環境は、無理に短期間で売上を上げるというよりも、長く働きながら着実に成長していくことを大切にしています。そういった意味でも、他のサロンでは難しかった方でも力を発揮しやすい環境だと思います。

――北原さんは「育成とは待つこと」と言っていますが、その考えを自然と実践されているんですね。

そうですね。自分ではあまり意識していなかったんですが、Dearsの仕組み自体が「急いで成果を出す」というよりも、「待ちながら育てていく」という考え方なので、自然とそういう関わり方になっていたと思います。

――今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか。

これまではよく働くスタッフを育てることが多かったんですが、これからはリーダーや経営者を育てていくことにも挑戦していきたいですね。実際に相談を受ける中で、その方が少しずつ変わっていくのを見るのがすごく楽しいんです。やっぱり育成が好きなんだと思います。これまで以上に、独立支援や経営面でのサポートにも関わっていけたらと思っています。

現在は不定期で対応している小規模サロン経営相談会も、今後は同じDearsを経営されている遠山直人さんと一緒に、月1回の定例会として本格的に動かしていく形で進めています。

あと埼玉でずっと事業をさせていただいているのに、これまで地域に対して何か貢献できていたかというと、正直あまりできていなかったなという思いがあって。ちょうどその頃、北原さんから「UBM(※)で地域ごとの支部会を作っていく」という話を聞いて、現在は埼玉支部長も任せていただいています。

※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。

今は集まったメンバーさんたちと「一緒に何かできたら、それが一番いいな」と思うようになっていって。地元・北海道には18年間住みましたが、埼玉にはもう23年間住んでいます。友人や仲間も多くいますし、「今週、週3で会いましたね」みたいな濃い関係のメンバーもいます。 みんなで一緒に埼玉を盛り上げながら、この場所にしっかり貢献していきたいです。

◆美容室・アイラッシュサロン経営 | 山口剛広

Dears 公式サイト
Frillnature 公式サイト
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取材を終えて

7店舗と聞くと敷居が高く感じるかもしれませんが、山口さんの話を聞いていると「これは誰にでもできることかもしれない」と思えてくるから不思議です。Dearsの教えを愚直に守り、原理原則を実践し続けた。その積み重ねが証明してくれているのは、素直にやり続けることの力です。

それともう一つ、山口さんの魅力として感じたのが、家庭の土台をしっかり築いていること。特に奥様への気遣いは、口先だけの「家族を大事にしています」とは全然違います。仕事の結果とは、家庭の安定の上で成り立っているんだなと改めて感じました。アカデミー仲間との連携から生まれる次の展開も、楽しみにしています! 

(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)

※掲載情報は2026年4月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。