【ネイリスト|加藤広子】「お手入れ専門サロン」で月商125万円を達成。お客様も施術者も幸せになる未来をつくりたい

神奈川県大和市で、お手入れ専門のネイルサロン「tumehapi(ツメハピ)」を運営する加藤広子さん。一般的なおしゃれのためのネイルではなく、自爪を育てるケアに特化したサロンとして、爪にコンプレックスを抱える方々から選ばれています。

現在はサロン経営だけでなく、ネイリスト向けコミュニティの運営にも取り組む加藤さん。しかし、現在の形にたどり着くまでの道のりは、決して順調なものではありませんでした。会社員からネイリストを目指すも、半年でサロンを退職。一度はネイル業界を離れたこともあったといいます。

そんな加藤さんが再びネイル業界に戻り、「お手入れ専門」という独自のコンセプトを見つけるきっかけになったのが、北原孝彦さんとの出会いでした。加藤さんが挫折を乗り越え、自分らしいサロンの形を見つけるまでの歩みを伺いました。

お手入れ専門ネイルサロン。手元のコンプレックスを「見せたくなる美しさ」へ。

――加藤さんのネイルサロンの特徴を教えてください。

ツメハピは、爪や手元の悩みに向き合う「お手入れ専門」のネイルサロンです。一般的なネイルには、「おしゃれのためにするもの」というイメージが強いと思います。ただ、実際には深爪や噛み癖に悩んでいる方、自分の爪の形が好きになれない方、年齢を重ねて手元に自信が持てなくなった方など、さまざまなお悩みを抱えて来店される方がいます

ネイルサロンにはキラキラしたイメージがあるので、「こんな爪で行っていいのかな」と不安に思っている方も多いんです。だからこそ、安心して来ていただける場所にしたいと思っています。

――具体的には、どんな施術をするんですか。

まずは爪の状態を見ながら、その方の手が一番綺麗に見える形に整えていきます。そのうえで、甘皮ケアをしながら爪周りを整えていきます。人によってはジェルを使わずにケアだけで整える方もいますし、爪を育てたい方や割れやすい方には、補強としてジェルをご提案することもあります。

もちろん1回でも変化を感じてくださる方はいますが、定期的に続けると、爪の形や見え方がどんどん変わっていくんですよ。

――爪って形が変わるんですね!ジェルはどのようなものを使っているんですか?

うちでは「パラジェル」を使っていて、爪への負担を減らしやすいフィルイン(ベースを一層残してつけ替える方法)にも対応しています。

ケアを定期的に続けることで少しずつ爪の状態が整っていくので、大体3回ほど来ていただくと、変化を実感される方が多いです最初は2週間ほどで元に戻ってきたりするんですけど、2回、3回と繰り返していくと、だんだん輪郭が整ってきて、爪の形自体が変わってくるんですよ

―― 施術を続けるなかで、お客様からはどのような声がありますか。

「自分の手を見るのが楽しくなった」という声は多いです。あとは、「前は自分の爪が恥ずかしかったけど、今は写真を撮りたくなるほど好き」とか、「手を見せることに抵抗がなくなった」とおっしゃる方もいます。コンプレックスだった爪が、少しずつ「自分の好きな部分」に変わっていくんです。その変化を一緒に喜べるのが、本当に嬉しいですね。 

――お客様と向き合ううえで、大切にしていることを教えてください。

私はお客様以上に、その方の爪を大事にしたいと思っているんです。前回来ていただいたときと比べて、どう変わったか、小さな変化でもちゃんと見てお伝えするようにしています。だから、「加藤さんは、推しのネイリストです!」なんて言ってくださる方もいるんですよ。本当にありがたいことですよね。

アートの世界から、ネイル業界へ

――加藤さんご自身は、もともとネイルが好きだったんですか? 

ネイルにはもともと興味がなかったですし、学生時代にサロンに通ったこともありませんでした。実は大学までは、ずっと美術を学んでいたんです。

――美術ですか! 

はい。小さい頃から絵を描くのが好きで、中学生の頃から画塾に通い、そのまま女子美術大学に進学。大学ではメディアアートを専攻して、大学院では立体芸術を学んでいました。作品制作を続けていて、ありがたいことに賞をいただくこともありました。

――作品制作には、どのように向き合っていたんですか。

通っていた画塾の水田大輔先生に「賞歴は自分を助けてくれるから、公募にはたくさん出しなさい」と教えてもらい、公募展にも積極的に出していました。

評価されることも好きだったので、課題や提出物など、人に見てもらうものには自然と力が入りました。でも途中から、人に求められたものを作るのは好きだけど、自分から強く表現したいものはないのかもしれないと気づいて……。そうして大学院を卒業後、アルバイトをしていたブランド買取販売の会社で働くことになりました。

「ネイリスト向いてるんじゃない?」人生を変えた、同僚からの一言

――その後、ネイルに興味を持ったきっかけは何だったんですか。

会社の同僚に、「(加藤さんは)手先が器用だから、ネイリストに向いてるんじゃない?」と言われたんです。そのときに、「自分が手を動かす仕事で、お客様にも喜んでもらえるなら、合っているかもしれない」と思い、25歳のときにネイルスクールに通い始めました。

ケア一つで、爪や手の印象って変わるんですよね。その奥深さに惹かれて、どんどんのめり込んでいきました。ただ、自分が「こんな施術をしたい」と思うレベルには、なかなか届きませんでした。手先が器用な方だったので、ある程度はできるだろうって思ってたのですが、実際はそんなに甘くなかったですね。技術不足を痛感し、よりレベルの高いスクールに入り直して練習を重ね、ネイリストの上位資格を取得しました。 

半年で挫折。それでも、もう一度ネイル業界へ

――資格を取った後は、サロンで働いたんですか? 

はい。当時教えてくださっていた先生から、「うちで働いてみない?」と声をかけてもらったんです。憧れていた先生だったので、本当に嬉しかったです。そのまま買取販売の仕事を辞めて、サロンで働かせてもらうことになりました。

でも、そこからが大変で……。 

――どう大変だったんでしょうか。

お客様に施術する側になると、限られた時間のなかでクオリティを出さなきゃいけない。そのプレッシャーについていけなくなってしまって……。今振り返ると、完全に練習不足だったと思います。だんだん「どうしたらいいか分からない」状態になってしまって、半年ほどでサロンを辞めることになりました。

――サロンを離れてからは、どんな時間を過ごしていたんですか? 

自信をなくして、一度実家に戻ったんです。でも、「このまま終わりたくない」という気持ちはずっとありました。

当時は電話対応が苦手だったので、まずはそこを克服したいと思って、コールセンターで働き始めたんです。そこで、相手に伝わるコミュニケーションを学びました。そして3年ほど働いた後、もう一度ネイル業界に戻ることにしました。

――再びネイル業界に戻るにあたって、次はどんな環境で働こうと考えていたんですか。 

前のサロンでは、自分を追い込みすぎてしまった部分もあったので、次は「まず経験を積める環境に行こう」と思ったんです。それで、30歳のときに新宿のサロンで働き始めました。そこはとにかく忙しくて、最初はかなり苦戦したんですが、「今度こそ逃げたくない」という気持ちが強かったです。

経験を積むなかで少しずつ指名も増えていき、入社して1年でマネージャーの役割を任せてもらいました。売り上げ管理やスタッフ育成、複数店舗の管理まで担当するようになりました。

――実際に、マネジメントをやってみてどうでしたか? 

すごく難しかったです。お店としては結果も出せて、自分自身も指名を月50件ほどいただけるようになりましたし、店舗の売り上げ目標も達成できました。

でも、スタッフ育成ではうまくいかないことも多く、自分の関わり方に悩むこともありました。「どうしたらみんなが働きやすいかな」「どうしたらついてきてもらえるかな」と、ずっと考えていたんです。

さらに回転率の高いサロンだったので、プレイヤーとして施術に入りながら、全体の管理やスタッフ育成も担当していました。自分が誰よりも動かなきゃと思っていて、繁忙期には1日に10人近く施術することもありました。

――当時の働き方を振り返って、どのように感じていますか。

スタッフに無理をさせたくなくて、「私がやるから大丈夫」と抱え込んでしまうことも多かったです。今振り返ると、「もっとできたことがあったんじゃないかな」と思うこともあります。その頃から、35歳までには独立したいと考えるようになりました。

UBMに参加して、サロンコンセプトが明確になった

――北原さんと出会ったのは、いつ頃だったんでしょうか。  

独立する少し前です。店長時代に、組織運営やスタッフ育成に悩むことが多くて、いろいろ調べていたときに、北原さんのInstagramの動画に出会ったんです。最初は「なんか面白い人がいるな」くらいの感覚だったんですけど、気づいたら夢中で見るようになっていました。

――そこからUBM(※)に入られたと。 

はい。実は、退職を伝えてから実際に辞めるまでに1年ほどかかりました。その間に会社との関係性も少しずつ難しくなっていって、かなり疲弊していたんです。「本当にこのままでいいのかな」と、ずっと考えていました。

最初は「辞めたらすぐ独立しよう」と思っていたんですけど、まずは一度、ちゃんと自分を立て直そうと思いました。そこで「せっかくだから勉強しよう」と思って参加したのが、UBMの前身だった「北原孝彦の精神と時の部屋(※)」でした。

※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。

――当時、どんなことを学びたいと思っていたんですか?

独立するなら、ちゃんと経営について勉強してからやりたいという気持ちが強かったです。あと、そのときは「本当にまたネイリストとしてやっていけるのかな」という迷いもまだあったので、「自分には何ができるんだろう」とずっと考えていました。

※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。

――ネイリスト以外の道も視野に入れていたんですね。

はい。でも、ネイルサロンの経営者・藤岡えりさんとの出会いが、独立を決める大きなきっかけになりました。ちょうどその頃、藤岡さんが開催されていたネイルサロン経営の勉強会に参加したんです。感覚ではなく数字をもとに経営する藤岡さんに衝撃を受けて、ネイル業界で挑戦しようと決めました。

――独立に向けて、どのような準備をしたのでしょうか。

藤岡さんのアドバイスを受けて、まずは自宅サロンからスタートしました。北原さんも「最初はお金をかけすぎなくていい」とおっしゃっていたので、当時住んでいた部屋の一角を整えて、小さく始めたんです。

ホットペッパーも契約して、しっかり準備してから始めたところ、1カ月目から想像以上にお客様が来てくださって。初月で20万円くらい売り上げが立ったんです。「じゃあ、次はちゃんと店舗を持とう」と思ってそこからすぐに物件を探して、神奈川県大和市に店舗をオープンしました。

本当にトントン拍子だったんですけど、それも藤岡さんや北原さんから学んだからこそだと思っています。

――最初からお手入れ専門サロンだったんですか?

いいえ。このコンセプトは、UBMで磨かれていきました。当時も、自分なりにサロンを作っているつもりではいました。でも、「爪のケアをします」とか、「爪をきれいに整えます」みたいな、ふわっとした伝え方しかできていなくて。「どんな悩みを持った人に、どうなってもらいたいのか」まで、ちゃんと言葉にできていなかったんです。

事業報告をしたときに、北原さんから「何のお店か分からない」と指摘されて、そこで初めて、コンセプトが曖昧だったことに気づきました。自分がやりたいことだけではなく、お客様が「行ってみたい」と思える伝え方を考えて、ちゃんと言葉にしなきゃいけないんだと学びました。

――そこから、どんな風にお店は変わっていったんでしょうか。

北原さんに「まずはお客様の声を聞いた方がいい」と教えてもらい、実際に一人ひとりヒアリングしてみたんです。そこで初めて、「うちのお店が、なぜ選ばれているのか」が見えてきました。その声をもとに、お手入れ専門という形を打ち出したことで、集客の導線も一気に整っていったんです。その結果、1人サロンで月商125万円を達成できました。

お客様も、ネイリストも幸せになれる業界へ

――スタッフと一緒に働くようになって、変わったことはありましたか?

これまでは、売り上げを作ることや、技術を教えることばかり考えていたんです。でも、スタッフを雇うタイミングで北原孝彦アカデミー(※)(以下、アカデミー)に入り、「考え方を伝えること」の大切さを学びました。

前のサロンで店長をしていた頃は、スタッフとの関わり方に悩むことも多かったんですが、考え方を共有するようになってから、スタッフとの向き合い方も、お店の空気感も大きく変わっていきました。お客様のリピート率も上がりましたし、スタッフとの関係性も良くなったんです。「人として向き合う」とはこういうことなんだなと、初めて実感した気がします。

今ではスタッフも成長してくれて、売り上げもしっかり立てられるようになりました。少しずつ私のお客様も任せられるようになってきたので、空いた時間を使って、今は人が集まれる場所を作ることにも挑戦しています

※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

――「人が集まれる場所」というのは、具体的にはどんなことでしょうか。

ネイリスト同士が交流できる勉強会やコミュニティを少しずつ作っています。UBMの神奈川支部会でも副支部長を務めていて、人前で話したり、運営側として動いたりすることも増えました。

あと、藤岡さんの勉強会で出会ったオーナーさんたちとのつながりも、私にとって大きいんです。特に、小茂田あやのさんとは、早い段階から一緒に学んでいて。勉強の仕方や、周りとの関わり方が本当に素敵で、近況報告をし合ったり、一緒に学んだり、「お互い頑張ろう!」と刺激をもらえる関係なんです。

――そうした人とのつながりから、気づいたことはありますか。

そういう環境のなかで、私は一人で頑張るよりも、誰かと一緒に学んだり、支え合いながら進んだりする方が力を発揮できるタイプなんだと、改めて気づいたんです。独立したときは、「一人でやらなきゃ」と思っていたんですけど、実はそうじゃなかったんだなと、最近感じています。

――最後に、これからどんな未来を目指していますか?

ネイル業界って、良くも悪くも、誰でも始めやすい業界なんです。その分、どうしたらいいか分からないまま、一人で悩んでしまうネイリストも多いなと感じています。

私自身、挫折したり、頑張りすぎて疲れてしまった経験もあるので、これからは、そういう人たちが孤立しないような場所を作っていきたいです。

あと、お客様にも、「手や爪のコンプレックスは、お手入れで変えていける」ということをもっと知ってもらいたいんです。ネイリストもお客様も、自分に自信を持てる。そんな業界にしていけたらいいなと思っています。

ネイリスト|加藤広子

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取材を終えて

加藤さんはとてもストイックな方です。手先が器用でも油断せず、うまくいかなくても諦めない。挫折してもそのたびに立ち上がり、前へ進んでいく強さがあります。

そして何より、メンターである藤岡さんや北原さんへの感謝を伝え、教わったことをそのまま行動に移していく。この「素直にやることをやる」姿勢こそが、うまくいくための一番の秘訣なんだろうなぁと、お話を聞きながら深く納得した取材でした。 

(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)

※掲載情報は2026年7月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。