【フィットネストレーナー|影山慎】筋肉を鍛える人から、筋肉でつなぐ人へ。「人由来」で動き出した仕事とチーム
フィットネストレーナーとして、幅広い世代の体づくりを支える影山慎さん。半年間で20キロの減量や、ベンチプレスを50キロから100キロへ伸ばすなど、目的別に成果へ導いています。
そんな影山さんですが、もともと運動が苦手で、体も強くありませんでした。しかし、失恋をきっかけに筋トレを始め、体が変わる実感を自信に変え、トレーニングの世界へのめり込んでいきます。
フィットネスクラブのゴールドジム勤務や独立後の停滞を経て、北原孝彦さんから言われたのが、「あなたは人由来で動くタイプの人間ですね」という言葉でした。一人で頑張ることをやめ、仲間との約束を行動の軸にすると、SNS事業やコミュニティ運営へと活動が広がりました。自信を得るために始めた筋トレが、どのように人と人をつなぐ取り組みへと広がったのか。影山さんのこれまでと現在について伺いました。
「ほにゃほにゃ」なのに指導は理詰め!影山さんが選ばれる理由

――影山さんの仕事内容について教えてください。
フィットネストレーナーと、動画編集やSNS運用代行を行っています。
フィットネストレーナーとしては、新卒で入社したゴールドジムで3年ほど働いた後、フリーランスとして独立。現在もゴールドジム内のスペースを借り、会社員時代から担当していたお客様を中心に指導しています。
――どのようなお客様が多いですか?
筋肉をしっかりつけたい方、本気でダイエットしたい方、健康を維持するために筋力をつけたい方など、目的はさまざまです。男性が7割、女性が3割ほどで、年齢も20代から70代まで幅広いんですよ。

――お客様が、影山さんを指名する決め手ってどこなのでしょうか。
そうですね。ゴールドジムには、筋肉を前面に出した「オラオラ」した雰囲気のトレーナーも多いですが、僕は結構「ほにゃほにゃ」しているからかも(笑)。雰囲気が柔らかいのでしょうね。
――ほにゃほにゃ(笑)
あとは、説明が分かりやすいとも言われます。例えば腕を鍛える場合でも、「肘を曲げましょう」だけでは終わりません。上腕二頭筋には短頭と長頭があり、短頭は腕を曲げたときの高さやボリュームに関係し、長頭は横から見たときの太さに関係します。
そこで、「あなたはこの部分が足りないので、こちらを鍛えましょう」「そのためには、動作の癖を修正しましょう」と、目的から逆算して説明します。必要に応じてイラストや図を使い、頭で理解したうえで体を動かしてもらいます。
こうした指導を続けるなかで、過去には半年間で20キロ減量した方や、ベンチプレスの重量が半年間で50キロから100キロになった方もいました。

――影山さん自身もすごい筋肉ですね!大会にも出場しているのでしょうか。
競技者として、初めて出場したクラシックフィジーク(※)の東京都の大会で2位になりました。その後、2025年に本格的なボディビルのカテゴリーへ初めて出場し、「東京ノービスボディビル選手権大会」の75キロ以下級で、30人中4位になりました。
ただ、競技で優れていることと、人に教えるのが上手なことは別だと思っています。自分の感覚と相手の感覚も違います。その人に合わせて、どのように伝えるかが大切です。
※クラシックフィジーク:フィジークとボディビルの要素を併せ持つカテゴリー。アウトラインや腹筋に加え、筋肉の大きさ、皮下脂肪の少なさ、筋肉の輪郭や付き方のバランス、ポージングなどが総合的に審査される。

失恋で世界が灰色に。運動嫌いの高校生が筋肉に自信を求めた
――影山さんが筋トレを始めたきっかけが気になります。
高校3年生の夏に失恋したことです。もともと僕は運動が嫌いで、体も強くありませんでした。低血圧や過敏性腸症候群があり、栄養の吸収もあまり良くないため、痩せやすい体質でした。よく学校の全校集会で倒れる人がいるじゃないですか。僕も、そういうタイプでした。
そんな自分が、好きだった人に振られたんです。この心のモヤモヤをどこへ向ければよいのか分からない。そんな時、登山家だった父親から、「お前もトレーニングしないか?」と誘われ、ジムへ行くようになったのが始まりです。
何もしていないと、アニメの表現にあるように、世界が灰色に見えるようなセンチメンタルな気持ちになって、どんどん沈んでしまう。トレーニングをしている間だけは何も考えずに済みました。激しく体を動かすと、しんどくなって頭が真っ白になります。それが良かったんです。

――続けるうちに、体にも変化が表れましたか?
はい。もともと細くて体脂肪も少なかったので、少し筋肉がつくだけでも、筋張ってきたのが分かりました。「体が変わってきたかもしれない」と感じられたことが、自信になったんです。
筋肉が大きくなることが喜びになり、そこから週5回、1回2時間ほどのトレーニングを始めました。結果的に、10年以上続けて今に至ります。

――高校3年生で体作りの面白さを知り、その後はどのような進路を選びましたか。
福祉系の大学へ進み、そのなかのデザイン学科で、インダストリアルデザインや建築などを学びました。ただ、就職先はゴールドジム一本に絞りました。その時点で、自分が最も長く続け、ほかの人より高いスキルを持っていたのが筋トレだったからです。
僕は、昔から好きなことには没頭できますが、それ以外のことは非常にしんどく感じてしまうところがあります。だからこそ、好きなことを仕事にするという、今らしい進路を選んだのだと思います。
実技試験に落ち、スクワットで吐く……。フィジカルエリートではない戦い方

――その後、ゴールドジムへ入社したと。
そうなんですが……実は入社試験で、実技試験をクリアできませんでした。周りには、幼少期からスポーツに取り組み、ジュニアオリンピックや甲子園に出場したような人が大勢いました。ただ面接や筆記試験などは歩んできた畑が違うので、そこが評価されて何とか入社できました。
フィジカルエリートと肩を並べるところから始まったので、スタート地点はかなり下だったと思います。入社後も、バーベルを担いでスクワットを数回しただけで吐くことがありました。
――体の強さでは周囲に及ばないなか、どのように筋肉をつけたのでしょうか。
非常に重い重量で大量にトレーニングすれば、筋肉は大きくなると思います。ただ、筋肉を鍛えるうえで重要なのは、狙った筋肉に刺激が乗っているかどうかです。同じ10キロでも、体幹を使って動かせば体幹に負荷がかかり、上腕二頭筋で持ち上げれば腕に負荷がかかります。
フィジカルエリートではなかったので、頭で理解し、効率よく筋肉を鍛える方法を選びました。そのため解剖学や生理学、力学など、バイオメカニクスと呼ばれる分野も幅広く学びました。
――誰からトレーニングを学びましたか?
「ゴールデンボーイ」と呼ばれる鈴木雅さんや、パワーリフティングのトップ選手たちから学びました。そのなかでも、最もお世話になったのが、ゴールドジムで一つ上の先輩だったマンモス鈴木さんです。

トレーニングの技術や筋肉に関する知識も教えてもらいました。例えば、狙った筋肉に負荷を乗せるには、針の穴に糸を通すような精度が求められます。そうした動作の緻密さを学びました。ただ、最も大きな学びは、「頭のネジをどれだけ外せるか」ということです。
――頭のネジを外す……??
理論を理解し、その範囲内で無難に取り組んでいるだけでは、常識を超えるような筋肉はつきません。ボディビルで優勝するには、「人外」と言われるほどの筋肉量が必要です。トップ選手は、皆さんどこかがぶっ壊れているんです。無我夢中で重量を挙げ、極めて高い強度で自分を追い込んでいる。その姿を見て、「ここまで取り組まなければダメなのだ」と学びました。

――その後、ゴールドジムから独立したのは、なぜですか?
店舗運営やマネジメント、ショップ業務を担当する一方で、外部の個人指導も行っていました。
お客様から直接「パーソナルトレーニングをお願いします」と依頼されることが増え、店舗業務と個人指導の両方が忙しくなって。睡眠時間が取れず、ストレスで蕁麻疹が出ることもあり、体が限界を迎えたんです。このまま両方を続けるのは無理なので、独立して時間を作るしかない。前向きな挑戦というより、追い込まれて独立しました。
ちょうどその頃にYouTubeで北原さんのことを知りました。印象に残っているのは、ジムを開業した女性トレーナーを救済企画で厳しく指導している動画です。
相手を「(言葉で)ボコボコ」にしている姿を見て、「ここまで言える人はカッコいいな」と思いました。
弟子入りしても2年間変化なし。YouTube救済企画で目が覚めた
――動画で北原さんを知り、その後UBM(※)に入ったと。
そうです、独立後もゴールドジム内のスペースを借りて指導を続けましたが、社員時代のようにジムからお客様を紹介してもらえるわけではなく、新規顧客は自分で獲得しなければなりませんでした。
ただ、ゴールドジム内で活動するトレーナーには広告上の制約があり、個人の公式サイトやホットペッパーなどには掲載できません。そこでSNSを活用しようと考え、SNS集客について発信していた北原さんのもとで学び始めました。ただ暇になると寝てばかりで……。一人ではなかなか気合が入らなかったので、「お尻をたたいてもらいたい」と思い、弟子区画(※)にも入りました。
※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。
※弟子区画:「3年間は挑戦から逃げない」と北原孝彦と約束した人が参加する。毎月の月報提出に加え、弟子合宿では全員が活動報告を行う。現在は募集を終了している。

――そこまで環境を変えれば、今度こそ動けそうですよね。
ところが、最初の2年ほどは何も変わりませんでした。独立後は一人で過ごす時間が増え、何をするにも意欲が湧かなかったんです。
そんなとき、北原さんのYouTubeの救済企画に出演し、「影山さんは、人由来で動くタイプの人間ですね」と言われました。そこで初めて、一人ではなく、人と一緒に取り組むことで動けるタイプなのだと気付いたんです。
――「人由来で動く」と気付いてから、何を変えましたか?
北原さんから教わった通り、人との約束を先に入れ、周りのために時間を使うようにしました。すると、無我夢中で動けるようになったんです。それが、現在のSNS事業やコミュニティ運営につながっています。
現在、YouTubeでは自分たちのチャンネル「筋肉道場」と「ドクター ムスクルス」を運営し、Instagramではマンモス鈴木さんと華山直二さんのアカウントを支援しています。担当範囲は、動画の撮影・編集からマーケティング設計、SNS運用のコンサルティングまで多岐にわたります。大学でデザインを学んだことや、パソコンを使った作業やものづくりが好きだったことも、現在の仕事に生きました。
――実際、数字ではどのような成果が出ていますか。
支援したYouTubeチャンネルでは、半年間で登録者数1000人を達成し、売り上げにもつながりました。
Instagramでは、2カ月でフォロワー1000人、動画で累計100万回再生を達成した例もあります。マンモスさんのInstagramは、半年間でフォロワーが2万人以上増えました。
――半年間で2万人以上!すごいですね。
企画とキャラクターが強かったのだと思います。ボディビルダーが大会で着用するビルダーパンツ姿で、真面目にトレーニングしている人が思い切りふざける。その組み合わせは珍しいですよね。その立ち位置には競合が少ないと考えて、「これなら面白くなるのではないか」と、マンモスさんと相談しながら企画しました。

――マンモスさんとのタッグ、強烈ですね……!
マンモスさんとの間で、今でも忘れられない出来事があります。
大会前の減量末期で空腹に眠れず、精神的にも追い込まれていた時期のことです。 その苛立ちを、僕はマンモスさんにぶつけてしまっていました。言葉が鋭くなる自覚もありました。
そんな僕に、マンモスさんは 「いくらでも俺をサンドバッグにしていいよ。それで影山くんが優勝できるなら、それでいいから」と言ってくれたんです。普段は感情を表に出さず、少し怖く見える方です。だからこそ、あの言葉は今でも忘れられません。
仲間と動くことで開花した力。筋肉で孤立する人を減らしたい
――現在、一緒に活動しているチームについて教えてください。
僕とマンモスさん、そしてアンドロイド鈴木さんの3人で活動しています。YouTubeチャンネル「筋肉道場」と、コミュニティ「東中野筋トレ部」を運営し、合同トレーニングや対面・オンラインでの勉強会、食事会などを行っています。
現在は、北原孝彦アカデミー(※)(以下、アカデミー)の「組織構築会」にも3人で毎月参加しているんですよ。
※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

――「組織構築会」では、どのようなことを行っているのでしょうか。
内容は少しずつ変わっていますが、根本的な目的は、3人で目的を持って話す時間を作ることです。
この前は、北原さんがよく話す「一石六鳥」をテーマに、「一つの行動から複数の成果を生み出すには、チームでどのようなイベントを開けばよいか」を話し合いました。1、2時間ほど話した内容に北原さんから助言をもらい、さらに練り直す。このやり取りを3回ほど繰り返しました。
――どのような取り組みが生まれましたか?
それが先ほど話をした「東中野筋トレ部」です。お金をかけずに「一石六鳥」の状態を作るための試みで、ゴールドジムで活動すれば、追加の場所代をかけずに合同トレーニングができます。
僕の自宅も、知り合いがいつでも来て作業できるように開放しているので、勉強会を開くこともできます。知り合いが運営するレンタルジムで合同トレーニングやセミナーを開けば、その場で経済も循環します。すでにある場所や関係を生かしながら、活動を回す方法を試している最中です。


――最後に、筋肉や体作りを通じて、どのようなことを実現したいですか。
体作りは、努力した分だけ少しずつ成果が表れます。その積み重ねによって思考が前向きになり、行動や発言、周囲との関係も変わっていきます。男性、女性関係なく「自信がない」「良く見られたい」「モテたい」といった思いを筋トレによってプラスに変え、積極的になれる人を増やしたいです。
――筋トレをきっかけにポジティブになれるのはいいですね!
はい。でも気を付けたほうがいいこともあって。トレーニング業界には、自分の体だけに意識が向き、周囲との関わりが薄くなる人が多いんです。昔の僕もそうでした。若いうちは続けられても、40代、50代になったときに孤立してしまう可能性があります。そうした人を一人でも減らしたいと思っています。
取材を終えて
正直、ボディビルダーのイメージは「オラオラ系で威圧感がある」でした。でも、影山さんは自称「ほにゃほにゃ系」。優しく穏やかな印象ですが、裏では相当ストイックに体を追い込んでるなんて……ギャップがありすぎて驚きました。
体作りは本来自分のためのものだけど、影山さんは「人のために動く」に意識がシフトしていった。だからこそ、筋肉仲間のみなさんとの活動の輪が広がっていったのでしょうね。「一人ではなくみんなでやる」を貫いた先にどんな広がりが生まれるのでしょうか。楽しみです!
(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)
※掲載情報は2026年6月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。

