【整体サロン経営|工藤誠】手法よりも「思想」を強みに12店舗展開。誰もが安心安全に働ける組織づくり
整体サロンを展開する「株式会社Non General」と、meta広告運用代行や店舗顧問業などを行う「株式会社Lifemake」。2社の代表取締役を務める工藤誠さんは、理学療法士などの国家資格保有者による整体サロンの経営など、多岐にわたる事業を展開しています。
今でこそ強固な組織を率いる工藤さんですが、過去には500万円の借金を抱えるどん底を経験。そこから起業を決意し、北原孝彦氏との出会いを経て「手法」ではなく「思想統一」を重視する現在の経営スタイルへとたどり着きました。
ノウハウではなく「人としてのあり方」を共有し、仲間と共に学び続ける組織はどのように作られたのか。起業からFC展開に至るまで、波乱万丈の軌跡に迫ります。
心身のパートナーとなる整体サロングループを経営
――まず、工藤さんが現在展開している事業について教えてください。
事業は大きく分けて3つあります。整体サロングループの経営、meta広告の運用代行事業、そして店舗の顧問業を行っています。メインの事業は整体事業で、現在は直営店とフランチャイズ(以下、FC)を合わせて12店舗を展開しています。

――12店舗も!工藤さんの整体サロンにはどんな特徴がありますか?
一つは、理学療法士や作業療法士など、国家資格を持つセラピストのみを採用している点です。そしてもう一つは、回数券ではなく月額制のサブスクリプションモデルを導入していることですね。
機能的な痛みが改善したらおしまいではなく、お客様にとって長く関わる「心身のパートナー」になることを、グループ全体で強く打ち出しています。月に2回から4回ほど通っていただくことで、日常のなかに私たちが提供する空間を「安心できる居場所」として組み込んでいただきたいんです。
――「心身のパートナー」になるために、どんなことを行っているのでしょうか。
全店舗スタッフへの教育を工夫しています。とはいえ、接客技術などのマニュアルは設けておらず、代わりに「思想統一」を強く打ち出していますね。マニュアルだけを共有しても、ただ作業を行うだけになってしまうので……。お客様から「あなたに相談できてよかった」と言われるスタッフであってほしいんです。
そのため、根本的に「人としてどうあるべきか」「どのような考え方でお客様と向き合うのか」という原理原則を徹底的に伝えています。共通概念として、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)のなかに「SINC」と「TRUST545」を掲げています。
――「SINC」と「TRUST545」について、具体的に教えてください。
「SINC」は、私たちが大切にしている「誠実、素直、挑戦、思いやり」という4つのキーワードです。
「TRUST545」は「1日の生産性5割、契約率最低40%、サブスクリプション更新回数5回」という具体的な数字目標を指しています。「TRUST」は「信頼する、関係性を築く、理解する、解決する、伴走する」の5つの英語の頭文字をとっています。この5つを指針として行動すれば「545」の目標を達成できるという意味です。


――これらの考え方を、どのようにスタッフの皆さんに浸透させているのでしょうか。
毎週、社内報やオープンチャットを通じて、音声や長文のテキストで発信し続けています。日々のエピソードを交えながら「ミッションに基づくこと」「人としてどうあるべきなのか」を常に問いかけているんです。

発信を続けることで、現場の些細な振る舞いが明確に変わってきました。具体的には、オンラインミーティングで話すときの表情や、メッセージの返信の仕方などですね。技術だけを追い求めるのではなく、相手から自分がどう見えているのかを意識し、お客様の感情や背景までしっかり理解しようとする姿勢が根付いてきたと感じます。
合わせてグループの勉強会で、自社のMVVについて考える時間を毎月とっており、僕が講義をする形ではなくみんなで話をしていただきながら理解を深めるといったスタッフ同士のコミュニケーションが取れるような設計で、実施しています。
この実施を通してMVVについての理解を深め、現場で挑戦するスタッフやマネージャー、オーナーたちが活性化していることを強く感じています。
meta広告運用と店舗顧問業で、経営者をサポート
――続いて、meta広告の運用代行事業についても教えてください。
主に整体やエステサロン、美容室の集客や求人をサポートしています。具体的には、動画クリエイティブの作成から、広告用ページの作成といった初期構築、そして月々の運用代行までを一貫して行っています。
集客や求人の数を伸ばすのはもちろんですが、経営者の方々から「集客についての悩みが解消された」と言っていただけるのが、私たちとしても一番の成果だと感じています。

――店舗顧問業では、どのようなサポートをしているのですか?
個人で経営している店舗や、数店舗を展開しているオーナーを対象に、店舗の拡大やスタッフ雇用のための事業構築をサポートしています。毎月、あるいは3カ月に1回のペースでコンサルティングを実施し、現在は15社ほど担当しています。長く関わらせていただいている方が多いですね。
――コンサルティングを通して、お客様にはどのような変化がありましたか?
例えば、副業で月8万円の売り上げだった方が2店舗を展開し、スタッフを4人雇用するまでに成長したケースがあります。ほかにも、赤字だったニキビケアのエステサロンが、オーナーとスタッフの二人で月に430万円の売り上げを作るようになったり、直営2店舗だった方がFCを含めて6店舗まで拡大したり……と、大きくスケールアップしています。
借金500万のどん底から、患者の一言で起業を決意
――現在は複数の事業を展開していますが、起業前はどんなことをしていたのですか?
大学を卒業後、理学療法士(以下、PT)として病院に就職しました。PTにそれほど興味があったわけではなく、いとこがPTだったので「やってみようかな」という感覚で。しかし、実際に働いて患者さんと触れ合うなかで「PT、面白いかも」と思い始めていました。

入職して少し経った頃、先輩からネットワークビジネスに誘われたのを機に、物販のビジネスを始めました。特に起業に憧れがあったわけではありませんが「先輩がやっているなら」と始めてみたんです。月に600万円以上稼げた時期もあり、高級ホテルやブランド品にお金を使い込んでしまって……。金銭感覚がおかしくなってしまいましたね。

――金銭感覚がおかしくなった、というと?
一気に稼いだことで、お金の使い方が雑になってしまったんですよね。
その後、コロナ禍が訪れてネットワークビジネスの活動ができなくなり、収入が途絶えました。もともとネットワークビジネスのための商材購入で借金をしていたところに、「稼がないと」と焦って情報商材などにも投資した結果、借金が最大で500万円ほどにまで膨れ上がってしまいました。当時、25歳でしたね。
――そこから、どのような経緯で起業を決意したのですか?
病院で担当していた患者さんから「今日が一番若いんだよ」と声をかけられたことがきっかけでした。偶然にも、同じタイミングでほかの患者さんからも同じ言葉を言われて。
借金が増えすぎて、このままPTとして病院に勤めていると完済できない。起業して稼いで返済するしかないと思って。「今が一番若いなら、今挑戦しないとダメだ」と考えました。翌日には上司に「病院を辞めます」と伝えていましたね。

――起業後はどんな仕事をしていたのですか?事業は順調だったのでしょうか。
整体の集客のためのSNS投稿の作成です。とはいえ、最初は全くお客様が来ませんでした。カフェでパソコンを開いて作業をする日々でしたが、コーヒー代すら厳しくなってしまって……。 「これはまずい」と思い、週に3日は訪問リハビリの仕事を始めて生活費を確保し、空いた2日で副業をする「セミフリーランス」の形に切り替えたんです。
――それから、どのように状況を好転させたのでしょうか。
友人に頭を下げてお金を貸してもらい、起業のためのコンサルティングを受けました。
そしてInstagramを使った支援サービスを作り込んだところ、初めての募集で50人ほどから問い合わせが来て。紆余曲折はありましたが、初月で100万円の売り上げを作ることができたんです。
その後は実家に住んで、徹底的にコストを下げて借金返済を優先する日々でした。当時付き合っていた彼女とも別れ、稼いだお金をすべて返済に充てて、2021年の1年間で借金を完済できました。

手法ではなく姿勢を学ぶ。北原氏から得た“考え方”とは
――借金を完済した後、どのようにして次のステップへ進んだのですか?
2022年1月に開催されたリアルのイベントで初めて北原さんにお会いし、その翌月に「精神と時の部屋」(※)に入会しました。実はその前から、北原さんのYouTubeチャンネルをずっと拝見していたんです。
当時の私は、華やかでキラキラした起業家の集まりにどうしても馴染めなかったのですが、北原さんには良い意味で「ダークヒーロー」のような雰囲気があって。そんな雰囲気に、強く惹かれていました。直接お会いして「この人のもとで学びたい」と思いましたね。
※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。

――入会当初は、どのような事業を行っていたのですか?
当時はInstagramのコンサルティング、紹介事業、物販など、複数の事業を手がけていました。個人的に、フリーランスにありがちなことだと思っているのですが……「複数の仕事を行っている」と、自分を大きく見せたかったのだと思います。
――北原さんからは、どのような指導を受けたのでしょうか。
入会して数カ月後の北海道合宿で、初めて北原さんに質問する機会がありました。「現在手がけている事業のなかで、どれが一番良いと思いますか?」と聞いたところ、「一番収益が上がっているInstagramのコンサルティングに特化しなさい」と、選択と集中を促されたんです。
さらに、私が「広告費を1万5000円ほどかけようと思うのですが、どうですかね?」と質問したところ、「そういうことではない。ハウツーではなく、考え方だ」と厳しく指摘されましたね。当時のことを、先日北原さんと撮影したYouTube動画でも話しています。
――「ハウツーではなく考え方」……そう言われて、どのように受け止めたのですか?
大きな衝撃を受けました。実は、そのときの合宿で北原さんとハグをして写真を撮っていただいたのですが、後から見返すと私の顔がこわばっているほどで……(笑)。

しかし、あの言葉があったおかげで「今の自分のままではダメだ」と明確に気づくことができました。以降は、小手先のノウハウや手法を追い求めるのをやめ、経営者としての「考え方」や「姿勢」を学ぶスタンスへと完全に切り替わりました。
その後は北原さんの顧問生として指導を受けるようになったのですが、「俺の意見に偏るのも良くない」とアドバイスをいただき、UBM(※)講師である原さんの指導も1年間受けました。原さんから店舗運営のベースとなる仕組みやマニュアル構築を学んだことが、現在の店舗事業の土台になっています。
※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。

仲間と共に学ぶ。当事者意識が根付くチーム作り
――その後は、どのように現在の店舗展開やチーム作りへとつながっていったのですか?
きっかけは、赤字店舗の救済でした。2024年の頭頃、私のコンサルティングのクライアント店舗がクローズしそうになり「私がお金を出すから、うちに移籍して一緒に店舗を運営しないか」と提案したんです。そのとき、私のお客様の一人であった矢口颯哉に声をかけました。
私がマーケティング、彼が施術などのオペレーションを担当し、一緒に立て直しを図ることにしたんです。それが転機となり、2024年6月に私の店舗をオープンし、10月には矢口さんと一緒に整体サロンの「株式会社Non General」を設立しました。北原さんからはコンサルティング事業に集中することを勧められましたが「私は店舗経営をやります」と主張し、会社を立ち上げたんです。
――そこから事業が拡大していったのでしょうか。
はい。翌年の2025年2月には広島に直営店舗を出したり、長野のクライアントがFCになってくれたりと、急速に店舗展開が進みました。もともとコンサルティングのお客様だった人たちが「一緒にやりたい」と言ってくれて。
同年5月には、矢口がもともと経営していた2店舗も私の会社に統合し、名実ともに一緒に進んでいくことになりました。ただ、組織が大きくなる一方で、ここから先は自分一人の力では厳しいし、周りの手を借りなければと考えるようになったんです。
――「仲間と共に」といったスタイルに変わったきっかけは、何だったのでしょうか?
2025年の12月に、北原さんから厳しい指摘を受けたことです。「周りがワーカーになっているよ」と言われました。「このまま一人でやり続けると、整体だけの事業で終わってしまうぞ」と。
そう言われて、ハッとしました。トップの私だけが学び続けると、現場のメンバーとの間にどうしても考え方のギャップが生まれてしまいます。このギャップをなくし、会社をさらに大きくしていくためには、私一人の力では限界がありました。
覚悟を決めて、メンバーに「私のおんぶに抱っこになっているよね。どう思う?」と伝えました。「そう思います」とメンバーも同意してくれ、翌年から役員の矢口やFCオーナーなどのメンバーをUBMに連れて行き、一緒に学ぶスタイルに変えたんです。

――一緒に学んだことで、チームに変化はありましたか?
メンバーの主体性が劇的に上がり、チームの総合力が大きく向上しました。
特に矢口は明確に変わりましたね。以前は少しプライドが高いところがあったのですが、人との向き合い方が柔らかくなり、私へのフォローも自発的に行ってくれるようになりました。些細なテキストコミュニケーションも、とてもスムーズになったんです。
北原さんの教えを通してメンバー全員の視座がアップデートされ「グループのために自分たちで考えて何とかしよう」という当事者意識が根付きました。今では私の周りのメンバー8人がUBMに関わっています。「一人で頑張っている」という感覚がなくなり、全員で同じ方向を向いて進める強固なチームになったと感じています。

安心安全な居場所を作り、誰かの人生を変える連鎖を起こす
――今後、会社やグループ全体をどのような組織に育てていきたいですか?
私の会社のミッションでもある「未来に希望が感じられる毎日を、すべての人へ届ける」を体現していきたいと思っています。目指しているのは、スタッフが入社してから退職するまで、グループ内でジョブチェンジをしながら一生を過ごせるような「安心安全」な会社を作ることですね。
――「安心安全な場所」の根底には、どんな想いがあるのでしょうか?
実は、中学生のときにいじめを受けていた経験があるんです。当時、バスケットボール部のキャプテンをしていたのですが、いじめに遭い、中高時代を通して心から落ち着ける居場所がありませんでした。その体験があるからこそ「誰もが安心安全で、自分の力を最大限に発揮できる場所を作りたい」という願いが、私の根本にあります。
「安心安全」というと、私のSNSによく登場するプーさんのぬいぐるみ……通称「ボロプー」も、その一つです。5歳のときから大切にしているぬいぐるみで、何度も洗濯機で洗ったため毛がすっかり抜けてしまっているのですが、26年間ずっと私のことを見守ってくれている相棒のような存在です。
ボロプーもそうですが、私は一つのものを大事にしたり、情が深かったりするタイプなんですよね。

――優しいお人柄が伝わってきます。最後に、ご自身の経験を踏まえ、これから関わる人たちへ何を届けていきたいですか?
私は、北原さんを通して人生が大きく変わりました。学びを通して人生を変えていただいたし、私もまた、事業を通して人の人生を変えてきた自負があります。この連鎖をどんどん広げていきたいですね。
取材を終えて
若くして12店舗のグループを率いる工藤さん。お会いする前は、はじめから何でもそつなくこなす方なのだろうなと思っていました。でも、500万円の借金を抱えたどん底の過去があったり。意外でした。
実績は確かなのに、奢らずえばらない。ご本人はニコニコと物腰柔らかく、トレードマークは5歳から連れ添う「ボロプー」。このギャップに、すっかり魅了された取材でした!
(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)
※掲載情報は2026年7月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください

