【住宅紹介|並木真綾】売る人から、つなぐ人へ。みんなが豊かになる住宅業界を目指して
愛知県を拠点に、家づくり伴走サービス「いえサポ」を運営する並木真綾さん。12年間の住宅営業経験を活かし、中立な立場から家づくりをサポートしています。また、工務店の営業支援も手がけ、家を建てる人と住宅会社をつないでいます。
住宅営業にやりがいを感じる一方、子育てとの両立や、お客様にとって最適な提案ができているのかという葛藤を抱くようになった並木さん。好きなことを仕事にしようと模索するなか、転機となったのが北原孝彦さんとの出会いでした。「自分中心で考えるのをやめる」という教えを受け、事業だけでなく、人との向き合い方も変わったといいます。
今目指すのは、お客様も工務店も、関わる人みんなが豊かになれる未来。並木さんはどのような経験を経て、現在の仕事と価値観にたどり着いたのでしょうか。その歩みと未来への思いに迫ります。
「家の100点」より、「人生の100点」を。家づくりに寄り添う伴走者

――まずは、並木さんが取り組んでいる「いえサポ」について教えてください。
「いえサポ」は、家を建てたい方に対して、予算を決めるところから住宅会社選び、土地探し、打ち合わせ、完成まで、一貫して伴走するサービスです。
家づくりは、予算や土地、住宅会社など、決めることがたくさんあります。そこで、一人ひとりの希望や状況を整理しながら、その方に合った選択ができるよう中立な立場からサポートしています。LINEでもZoomでも相談していただいて、必要であれば図面を見たり、各社の資金計画を比較したりもします。相談回数も特に決めていません。
――家づくりの「セカンドオピニオン」のような存在なんですね。
そうです。住宅会社によって考え方も違いますし、いろいろな人から話を聞くほど、「結局何が正しいんだろう」と迷ってしまう方も少なくありません。だから、何か引っかかったときは「並木さんに聞いてみよう」と思ってもらえる。そんな、そばにいる存在を目指しています。

――家づくりをサポートするうえで、大切にしている考え方はありますか?
私は、家そのものを100点にすることよりも、その家を建てた後の人生が幸せであることを大切にしています。
いい家を見れば見るほど「あれも欲しい、これも欲しい」と、どうしても予算が上がっていきます。でも、家にお金をかけすぎて、その後の暮らしが苦しくなってしまったら意味がない。だからこそ、まずはそのご家族にとって無理のない予算を一緒に考えます。そのうえで、叶えたい暮らしや希望を整理しながら、その方に合った家づくりを考えていきます。
――並木さんは「いえサポ」のほかにも、お仕事をされていますよね。
工務店さんの営業支援も行っています。現在支援している工務店さんから「いい家を作っているのに、営業を担当する人がいない」という相談を受け、12年間の住宅営業経験を活かして、お客様対応から契約までの営業活動を担っています。

――具体的には、どんなことをしていますか。
お客様への接客から、要望のヒアリング、提案、契約まで担当しています。あと、「どのような順番で話を聞くのか」「どのタイミングで何を提案するのか」といった営業の流れを整えることも支援しています。まだ営業支援として携わっているのは1社ですが、実際に、支援先では成約にもつながっています。
人生に寄り添う仕事がしたい。住宅営業として歩んだ12年間

――ここからは、並木さんのこれまでについて伺います。大学卒業後は、どのような仕事に就いたのでしょうか?
大学では法学部政治学科で学び、卒業後は人の人生における大きな意思決定に関われる仕事がしたいと思い、住友林業に入社しました。住宅は、多くの方にとって人生で一番大きな買い物です。お客様の人生に深く関わりながら、一緒に家づくりができる。そこに魅力を感じて、住宅営業の道を選びました。
――実際に住宅営業を経験してみて、いかがでしたか?
とても楽しかったです。ただ家を提案するだけではなく、ご家族のことや仕事、子育て、休日の過ごし方など、普段なかなか聞けないようなことまで伺う。そうやって一つひとつお話を聞きながら、「このご家族にはどんな暮らしが合うだろう」と一緒に考えていく。深く関わりながら、その先の暮らしを作っていける、そこに大きなやりがいを感じていましたし、だからこそ12年間続けられたのだと思います。

――12年間って、かなり長いですよね。
そうですね。当時は、結婚や出産を機に辞める女性社員も周りに多かったんですが、私は夫の協力もあって、子どもが生まれてからも仕事を続けていました。
夫は私の仕事に関して「なんで辞めるの?続ければいいじゃん」という感じで、私が働くことを当たり前のように応援してくれて。私自身も住宅営業の仕事が好きだったので、結婚や出産を理由に辞めようとはあまり考えていませんでした。住宅営業は土日に仕事が入ることも多かったのですが、その間は夫が子どもを見てくれていました。

好きな仕事なのに、力を出し切れない。働き方を見つめ直した転機
――住宅営業の仕事が好きだったなかで、働き方を変えようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
一つは、子育てをしながら働くなかで、思うように仕事ができなくなったことです。一人目の子どもが生まれた後は土日ともに働いていましたが、二人目のときには日曜日を休むようになって。
住宅営業は土日がメイン。日曜日に休むようになると、どうしても働ける時間が限られてしまい、「5〜6割ほどの力しか出せていない」ような感覚があって。もっとできるはずなのに、思うように力を発揮できないことに、モヤモヤしていました。それに住宅価格がどんどん上がったこともきっかけの一つでした。

――それはなぜ?
価格が高くなっていくなかで、「今の提案が、本当にお客様にとって一番いい選択なのかな」と思うことが増えていきました。
住宅営業の仕事自体は好きでしたし、お客様と深く関われることにもやりがいを感じていました。だからこそ、自分が理想とする仕事について、少しずつ考えるようになったのだと思います。

――そこから、少しずつ動き始めたんですか?
まだ会社にいる頃から、「自分にはどんな形で、何ができるんだろう」と模索し始めました。すぐに会社を辞めたわけではなく、まずはSNSで発信しながら、家づくりの相談を受けることから少しずつ始めていきました。一方で、当時は「せっかくなら自分の好きなことを仕事にしたい」という思いもあり、以前から好きだった即興演劇を仕事にできないかとも考えていました。
遠かった起業が、現実的な選択肢に。北原孝彦さんとの出会い

――これからの道を模索していたなかで、北原さんとはどのように出会ったのでしょうか。
二人目の育児休業に入る直前、YouTubeで北原さんを知りました。それまでの私にとって、起業はとても遠い世界の話でした。どこか危ないものというイメージもあって、自分が起業するなんて現実的に考えたことはなかったんです。
だから当初は本格的に事業を始めようとは考えておらず、好きなことを生かして、副業のような形で少し収入を得られたらいいなと考えていましたね。
――北原さんの発信を見て、特に印象に残ったことは何でしたか?
一番衝撃を受けたのは、「ゼロから100まで全部やれ」という言葉です。
北原さんは、ゼロから事業を作って売り上げを伸ばしていくまでのロードマップを、具体的に言語化して話されていました。それまで自分とは関係のない世界だと思っていた起業が、北原さんの話を聞いたことで、「もしかしたら、自分にもできるかもしれない」と初めて身近な選択肢に変わったんです。
――そこから、すぐに北原さんのもとで学び始めたのでしょうか?
はい。当時は資金に余裕があったわけではありませんが、弟子区画の話を知って、「この機会がいつまであるかわからない。やるなら本当に腹をくくって取り組もう」と思いました。そこで、当時の北原の精神と時の部屋(※)に入り、弟子区画(※)にもほぼ同じタイミングで参加しました。
※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。
※弟子区画:「3年間は挑戦から逃げない」と北原孝彦と約束した人が参加する。毎月の月報提出に加え、弟子合宿では全員が活動報告を行う。現在は募集を終了している。
「誰の何を解決するの?」北原さんの問いで気づいた、自分の役割

――北原さんのもとで学び始めて、最初はどんなことを始めたんですか?
せっかくなら好きなことを仕事にしたいという考えから、最初は即興演劇を使ったコミュニケーションの事業に挑戦しました。オンラインでワークショップを開いたり、100日間ライブ配信を続けたりと、さまざまなことを試しました。数万円ほどの売り上げにはなりましたが、事業として続けていくのは難しいと感じるようになったんです。

――その経験を通して、事業に対する考え方はどう変わりましたか。
一番大きな気づきは、「自分がやりたいこと」と「人から求められること」は違うということでした。
北原さんから、「あなたの商品は誰の何を解決するの?」と何度も問われました。私は演劇が好きで、その良さも知っています。でも、それが誰かの悩みを解決するものになっているかと考えると、うまく答えられなかったんです。
さらに、自分が求められているかどうかは、市場を見れば分かるということも教えてもらいました。やりたいと思う気持ちだけではなく、実際に誰が必要としてくれているのかを見る。その視点を持てたことで、事業に対する考え方が大きく変わりました。
――その「人から求められること」という視点で考えたとき、何が見えてきたのでしょうか。
自分の住宅営業の経験を必要としてくれる人がいるということです。会社員時代から住宅相談を始めていたのですが、実際に相談してくださる方がいて、「家づくりで困っている人はいるんだ」と実感しました。
住宅は金額も大きく、お客様の人生にも関わる仕事です。その責任の重さが分かっていたからこそ、最初は独立してまで住宅を仕事にすることを避けていました。
でも、「自分は何を求められているのか」という視点で考えると、12年間の経験があり、実際に必要としてくれる人もいる。そこでようやく、自分の経験を活かして住宅で人の役に立とうと決めました。
「自分中心」から「相手のため」へ。人との向き合い方を変えた学び
――ほかに北原さんとの出会いによって変わったことはありますか?
一番大きいのは、人との関わり方です。北原さんから、自分中心で考えるのをやめて、まずはお世話になった人に恩を返すように言われました。
それまでは新しいお客様やつながりを求めて、外にばかり目を向けていたんです。でも、その言葉を受けて、前職の上司や後輩に会いに行き、悩みを聞いて、不動産会社や家具店などを紹介するようになりました。
――実際に行動してみて、感じたことはありましたか?
これまでは、「お客様になりそうかどうか」で人との関係を判断することもありました。でも今は、お客様になるかどうかに関係なく、自分の情報や知識で力になれるなら、惜しまず提供したらいいと思うようになって。その人が豊かになれば、巡り巡って返ってくることもあると、少しずつ理解できるようになりました。

――損得ではなく、相手のためにできることを考えるようになったんですね。
実は、町工場を営む両親がまさにそういう人たちでした。何かをいただいたら、1.5倍にして返そうとするような両親だったんです。子どもの頃の私は、それを見て「そんなに返したら損じゃない?」と思っていました。
でも、自分で事業を始めて仕事をいただけるありがたさを知ったことで、感謝や恩返しで人との関係が回っていくという両親の生き方が、ようやく腑に落ちました。

お客様も事業者も豊かに。目指すのは、人と人をつなぐコーディネーター
――2026年1月には、北原孝彦アカデミー(※)(以下、アカデミー)にも入会しています。どんな思いがあったのでしょうか。
経営者としてのあり方をもっと学びたいと思ったからです。北原さんのそばを離れたら、また自分のビジネスを伸ばすことばかり考えてしまうかもしれない。自分だけが利益を得るのではなく、関わってくれる人たちにもきちんと返していける仕事がしたい。そう思い、アカデミーで学び続けることを選びました。
※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

――独立してから現在まで、事業の状況はいかがですか?
2024年に独立してから、月2〜4件ほどご相談をいただいています。以前はSNSで発信していましたが、現在は紹介が中心です。少しずつ自分の住宅営業の経験を必要としてくださる方がいることを実感しています。
――これから、どのような事業にしていきたいと考えていますか?
お客様だけでなく、家づくりに関わる人みんなが豊かになれる形を作っていきたいです。家づくりはお客様と私だけではできません。工務店さんや土地を扱う不動産会社さんなど、さまざまな事業者さんが関わってくださるからこそ成り立つ仕事です。
私が間に入ることで、工務店さんの成約率が上がったり、余分な仕事に振り回されることが減ったり、お客様とのトラブルを未然に防げたりする。家づくりで迷ったときに安心して頼れる存在でありたいと思っています。

――関わる人みんなにとって良い形を目指しているんですね。
そうですね。以前は、両方にいい顔をするのは違うのかなと思うこともありましたが、今は、お客様と事業者さんが共存できる立ち位置はあると思っています。
私自身が何かをすべて担うというより、私はただハブでいるだけ。必要な人たちをつなぎながら、それぞれが力を発揮できる関係を作っていきたいです。
お客様も、工務店さんも、周りの事業者さんも、みんながきちんと共存して豊かになれる。そんな未来を作るためのコーディネーターでありたいと思っています。
取材を終えて
「何かをいただいたら、1.5倍にして返す」。並木さんのご両親は、そんな素敵な習慣を持つ方たちなのだそうです。損得で動かないその姿勢を、並木さんは12年間の住宅営業の日々のなかで、自然と自分のものにしていったのかもしれません。
お客様も工務店さんも分け隔てなく大切にし、「ただのハブでいたい」と語る並木さん。求めすぎず、返しすぎるくらいがちょうどいい。そんな生き方を、私も見習いたいなと思いました。
(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)
※掲載情報は2026年7月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。

