【業務改善|平井裕】バックオフィスに余白をつくり、選ばれる人を増やす。私が大切にしてきた北原孝彦との約束

バックオフィスの業務設計・効率化・自走化を支援するシンクインク株式会社の代表・平井裕さん。現場の仕事を巻き取るのではなく、仕組みを整えることで、働く人に「考える時間」を生み、その余白の中で人が育つ土台を築こうとしています。現在は企業向けの業務改善に加え、個人向けの講座やコンサルも行っています。

しかし、今の形に至るまでには、いくつかの転機がありました。銀行員として法人融資やM&Aに携わった後、上場を目指す会社で管理部門を担い、その後に独立。業務改善を掲げて事業を始めたものの、当初は自分が稼がなければ売上が立たず、人を増やしても利益が残りにくかったといいます。

その後、北原孝彦さんのYouTubeとの出会いをきっかけに、ビジネス行動管理大学(UBM(※))、そして北原孝彦アカデミー(※)へ。約束し、実行と報告を重ねる中で、事業との向き合い方だけでなく、人との関わり方も大きく変わったといいます。

仕組みをつくるだけではなく、人が育つ土台までつくる経営者へ。平井さんのこれまでの歩みを聞きました。

※UBM(ビジネス行動管理大学):北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に「北原の精神と時の部屋」として設立、2024年11月に現名称に改称。

※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

10日かかった仕事が10分で!バックオフィスを変える仕組みの力

――公式サイトなども拝見したのですが、印象的だったのが、「バックオフィス業務を巻き取る」のではなく、「仕組みをつくる」という点です。

巻き取り型だと、オンライン秘書や事務代行のように業務そのものを引き受ける形が中心になります。一方で、シンクインクでは業務改善、つまり仕事の進め方を見直す支援をしています。例えば事務職の方が日々担う仕事には、アナログで時間のかかる作業が多くあります。そこに仕組みをつくることで、1時間かかっていたものを5分で終えられるようにしたり、ミスを減らしたりできるんです。

――代表的な事例はありますか。

ある専門商社では、商品数の多い在庫管理をExcelで行っており、仕入れや納品のたびに在庫数などを手入力で更新していました。納品書や発注書への転記も必要で、毎月10日ほどかかっていたんです。そこで、手入力と転記の作業をまとめ、ボタン一つで必要な数字が反映される仕組みにしました。すると作業は10分ほどで済むようになり、事務スタッフの皆さんからは「有給が取れるようになりました!」と泣いて喜んでいただけました。

――それはすごい!仕組みをつくるだけでなく、現場で使えるようになるまで伴走するそうですね。

そうなんです。一般的には仕組みをつくって終わりというケースも多いですが、僕たちがゴールとしているのは、外注や専門家に頼らず、社内だけで維持・改善できるようになること。だから、その作業を一人で担っている方に対して、仕組みのつくり方や考え方も伝えています。

――他にもありますか。

直近では、経費精算の仕組みづくりも行いました。紙で管理したいという強いこだわりがある会社さんで、以前はレシートを見ながら経理担当者が明細を一件ずつ書き写していたんです。そこで、紙で出力する形はそのまま残しつつ、Googleフォームに入力した内容が印刷用の書式に自動で反映される仕組みをつくりました。そうすれば中身を確認して印刷するだけですからね。

――会社の譲れない部分は残しながら、一番いい方法を一緒に考えるということですね。

一般的な業務改善だと、特定のツールを前提に進むことも多いですが、僕たちはまず現場の状況を丁寧にヒアリングします。そのうえで、譲れないところは残したまま、どう効率化できるかを考えるんです。クライアントの社員さんの中にはパソコンが得意ではない方もいるので、無理なく使える方法を選ぶことも大切にしています。

――そもそも、平井さんはなぜバックオフィスの業務改善を始めたのですか?

理由は二つあります。一つは、前職の銀行員時代に多くの会社を見てきて、営業や商品、技術を強みとして語る会社は多くても、バックオフィスを強みとして語る会社はほとんど中ったことです。もう一つは、バックオフィスで働く方、特に家事や育児も担う方は、日々の業務に追われ、学ぶ余裕を持ちにくい。これでは、自分で考えて動けと言われても、その前提となる余白がありません。

だったら、まず僕たちが「考える時間」をつくるお手伝いをしようと思いました。作業時間を短縮し、今ある事務作業を題材に改善していく。その過程ごとノウハウやスキルにしてほしい。そういう思いから、この事業を始めました。

――単なる代行ではなく、現場に余白をつくることが出発点だったわけですね。

そうです。現在は、業務改善の支援に加えて、もともと銀行員だった経験を生かし、銀行融資に向けた事業計画の立て方など、財務面のコンサルも行っています。個人向けには、「継続契約が取れない」「紹介が生まれない」といった悩みを持つ方に向けて、クライアントワークに関する講座やコンサルティングも行っています。

銀行員から上場準備、そして独立 順調だったキャリアの先で見えた限界

――先ほどからおっしゃられていますが、平井さんはもともと銀行員として働かれていたのですか?

はい。2012年に新卒で銀行へ入社し、法人向けの融資提案などをしていました。退職前はM&Aアドバイザーも務めていました。

その後、取引先企業の社長から声をかけていただき、製造業と製造派遣業を手がける会社へ転職して、取締役として管理部門とIPO準備を担うことになりました。3〜4年後の上場を見据え、給与計算や請求書作成を含む管理部門の流れを整え、運用体制までつくっていました。

――それは、かなり大きな挑戦だったのでは……!

そうですね。ただ、「面白そう」「やってみたい」という気持ちのほうが強かったですし、7割くらいは銀行時代の経験を活かせました。銀行で培ったルール感覚や数字の見方が、思った以上に役に立ったんです。

――取り組み始めてからは順調だったんですか。

かなり順調でした。このまま問題なく進むと考えていたのですが……2020年のコロナ禍で売上が6割ほどまで落ち、上場どころではなくなったんです。会社は生き残りを優先せざるを得なくなり、最終的には役職から離れて会社を去ることになりました。

――それは辛い経験でしたね。当時はどんなお気持ちでしたか。

「自分の人生をなんとかしないといけない」という焦りの気持ちが強かったですね。30代前半という最も脂がのった時期、このまま終わらせたくない、もっと挑戦したい。そんな思いから、独立を決意しました。

独立後は、紹介会社さんからご縁をいただいたお客様に対して、売上や予算を整理し、必要な営業件数まで逆算する経営管理・経営企画の支援をしていました。

――会社としても経営企画を主軸にしていったんですか。

いえ、そうではないんです。会社として掲げていたのはあくまで業務改善でした。ただ、その頃の実態はフリーランスに近く、自分で案件を獲得し、できることを提供していました。

その状態が1年半ほど続いた頃、たまたまExcelの仕組み構築の仕事をいただいたのですが、そこでキャパシティが限界を超え、IndeedでExcelを扱える方を採用して作業をお願いするようになりました。

ただ、その時点では「会社の売上=自分が稼いで生み出す売上」という状態でした。外注費が増えて利益率を下げただけ、というのが実態でしたね。そんな時に出会ったのが、北原孝彦さんのとあるYouTube動画でした。

人生を変えた、UBMでの「約束」

――そのYouTube動画とは、どんな内容だったのですか?

美容室経営の森井伸明さんが救済企画で出演していました。詳しい内容は割愛しますが、北原さんはかなり厳しい指摘をするんですけど、最後に「兄貴を許せ」というメッセージを残すんです。

この動画を見た時、心に刺さるものがありました。理屈だけでなく、相手の人生や立場まで含めて見ているし、言い方や表情、声のトーンからも、相手のことを本気で思って言っているのが伝わってきました。動画を見て「この人すごいな」と心から思いました。

今まで僕はこれほどの熱量で接してもらった経験がありません。本気で人に向き合う北原さんのもとで学びたい、そう思ってUBMに入ることを決めました。

――実際にUBMに入られて、何が変わりましたか。

実は、最初の1年間は何も変わりませんでした。合宿には行くし、スケジュールも立てる。でも、自分に負荷をかけず、できる範囲のことだけをやっていたんです。講師の方との壁打ちも、まだ求められるレベルではないという自覚があって、怖くてできませんでした。しかし2025年2月の大阪合宿で、初めてめぐさん(松下恵さん)と壁打ちをしたんです。その時、一番大きかった学びが「約束」でした。

――約束?

次の壁打ちまでに何をやるかを約束するんです。しかも、その時に示してくださる課題が、自分にとって少し負荷のかかるレベルなんですよ。自分が無理なくできる範囲より、少し上を求められる。だから、約束して実行することを繰り返す中で、自分は大きく変わっていきました。

その後、めぐさん主催のイベントがあって、そのランチの場で北原さんがたまたま僕の席にも来てくださり、壁打ちをしていただけました。そこで初めて、少し強めのトーンで「役員報酬、取りすぎや」と言われたんです。後から北原さんも、「平井という人間に初めてちゃんと向き合って話したのは、あの時からだよね」とおっしゃっていました。

――北原さんは、平井さんのことを気にかけていたのですね。

そうなんです。そこで初めて、北原さんに真正面から課題を指摘していただいた感覚がありました。

それと並行して、愛知県に住んでいることもあって名古屋の支部会にも通うようになり、そこでUBM講師の大田じゅりさんと出会いました。

その後、報告を続ける中で認知していただき、合宿でも声をかけていただくようになりました。そして、「平井さん、UBMの愛知支部長をやってみたらどうですか?」という提案をいただいたんです。はじめは自分にできるかなと思ったのですが、これはもうやるしかありません。現在は愛知支部長を務めさせていただいています。

――松下さんと大田さんの存在があって、お二人との約束ができて、そこから平井さんに負荷がかかり始めた。そこからどう変わっていったんですか。

本当に、ひたすら約束して、それを守って報告する、その繰り返しでした。気づいたら事業も右肩上がりになっていき、人との距離感もどんどん縮まっていった感覚があります。

人を切るから手を離さないへ 北原孝彦から学んだ人との向き合い方

――UBMとアカデミーでは学びの質にも違いがありますが、その中で、平井さんご自身が一番大きく変わったのはどんな点でしたか。

人との関わり方です。僕が出演させていただいたYouTubeでもお話しした通り、以前の僕は、できない人に対して「なんでできないんだ」と思ってしまうし、自分の思い通りに動いてくれなかったら、すぐに縁を切ってしまうタイプでした。

でも今は、まず相手の話を聞いて、感謝を伝え、自分が悪い時は素直に謝る。相手を大事にしていることを、きちんと伝えるようになりました。

――変化を実感した出来事はありますか。

あります。SNS運用をお願いしているKさんというメンバーのことです。その方は少し抜けているところがあって、スケジュール管理が苦手。予定日までにタスクが間に合わない、ということが続いた時期がありました。

以前の僕なら、成果が出ていない時点で契約を終えていました。でも、北原さんから「相手がこちらを向いてくれているなら、自分も手を離さない」と学び、それを実行したんです。そうしたら今では、僕が主宰の勉強会に毎回参加してくれて、「平井さんのために頑張りたいです!」と言ってくれるようになりました。

――平井さんは、北原さんのどんなところに強く惹かれているのでしょうか。

絶対に変わらないところが好きです。下手をしたら自分のこと以上に、人のことを大事にしているんじゃないかと思うくらい、目の前の人に全力で向き合われる。「絶対に手を離さない」と言葉で言うだけでなく、行動で信頼させてくださるんです。だから、北原さんに何を言われても、僕は全部「はい」なんですよ。

――そこまで素直に受け止められるのは、なぜなんでしょうか。

ご自身が、生き様として示しているからだと思います。言葉の背景に、すべて行動がある。だから、納得できるんです。

バックオフィスの働き方を変え、「選ばれる人」を増やしたい

――現在、企業の業務改善だけでなく、クライアントワーカー向けに勉強会や講座も続けているとのことでしたが、平井さんはこれからどんな未来をつくっていきたいと考えていますか。

クライアントワークをしている方たちの働き方をもっと良くしたいです。そして、お客様が抱えるストレスもなくしたいんです。そうなれば、お客様も嫌な思いをせずに済みますし、クライアントワーカーさんも「契約を切られるかもしれない」と不安を抱えずに済む。お互いにとっていい状態になってほしいと思っています。

ですので、バックオフィスの働き方を変えて、事務職の方がもっと自由に働けるようにしたい。ただ、そのためには事務処理のスキルだけでなく、お客様に選ばれるための対人スキルも必要になります。事務職の方は、お客様の仕事をあまり経験していないケースも多いので、この講座を通して「人対人」の感覚も身につけてもらいたいと考えています。人と向き合う「あり方」が加われば、スキルもあり、人としても信頼される方が生まれると思うんですよね。

――スキルだけではなく「あり方」を大切にしているんですね。

はい。それを形にしたのが「お客様対応における行動習慣の基準値」です。これはいわば会社のカルチャーブックで、”仕事の当たり前”を言語化したものです。

業務改善の仕事をしていると、事業主の方から「言われたことしかやらない」「遅延しても連絡がない」という不満をよく聞きます。でも僕にとって、それは全部、仕事の基礎の基礎。特別なことではありません。ただ、その”当たり前”が言葉になっていないから、伝わらない。そう気づいて書き出したら、全100項目になっていました。

経営者に見せると「ここまで言語化しているのはすごい!」と驚かれます。今では講座のコンテンツとして伝えるほか、パートナーの皆さんにも日々実践してもらっています。

――そういう力が身につけば、活躍の場は今の職場にとどまらないと。

その通りです。この100項目の基準値を”特別なこと”ではなく”普通のこと”として実践できる方 が、僕の会社のコンサルティングメンバーになってくれてもいいし、事務代行として仕事を受けてもいいですし、さまざまな形につながっていく可能性があると考えています。

最終的には、みんなで学び合い、つながり続けられる場所もつくりたいです。同じ基準値を共有している人たちが集まれば、予想外の良いことが生まれる。僕は、それをバックオフィス領域に特化して行っていきたいです。

――仕組みづくりだけでなく、人との向き合い方まで含めて形にしようとしているんですね。

はい。僕が目指しているのは、「スキルがあり、人としても信頼できる事務職のエキスパート」を一人でも多く輩出することです。そうなれば、お客様にとってはストレスのない環境が生まれ、クライアントワーカー側は自由な働き方が実現できます。そんなバックオフィス文化をつくっていきたいと思っています。 



取材を終えて

取材を通じて感じたのは、平井さんが北原さんから学んだ「人と本気で向き合う」という姿勢を、バックオフィスという自分のフィールドでそのまま実践しているということです。

スキルさえあれば仕事につながるわけじゃない。人と向き合う際の考え方やあり方が大事。向き合う手間を惜しまない平井さんの姿勢に、本物の情熱を感じました。 

「スキルがあり、人としても信頼できる事務職のエキスパート」が集まれば、最強のバックオフィスチームになりますね。お話を聞いているだけでワクワクしてきました! 平井さんとチームの皆さんのこれからが楽しみです。

(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)

※掲載情報は2026年4月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。