【美容師・ECサイト運営|やしまひとみ】女性美容師が長く働ける土台を作りたい!美髪作りから広がる新しい挑戦
美容師歴18年、SNS総フォロワー数10万人以上。原宿の美容室「ROVER(ローバー)」で、一人ひとりの髪に合わせた美髪作りを提案している、やしまひとみさん。
やしまさんが考える美髪の秘訣は、「自分の髪の声を聞くこと」。日々状態が変化する髪に対して、今の髪に何が必要で、何を控えたほうがいいのかを見極めることが大切なのだと語ります。
現在はSNSでヘアケア情報を発信し、ECサイトも運営。美容師向けの勉強会やコンサルにも活動を広げていますが、これまでの歩みは順風満帆ではありませんでした。
最初のサロンを7カ月で退職し、突発性難聴、結婚・出産による働き方の変化も経験。それでも美容師を続けてきたやしまさんは、北原孝彦さんとの出会いを機に、美容師を支える活動にも力を注いでいます。3児の母でもあるやしまさんに、これまでとこれからを聞きました。
「美髪」は施術で終わらない。ホームケアまでが仕事
――お会いした瞬間から思っていたのですが、やしまさんの髪はツヤツヤで本当におきれいですね!
ありがとうございます。嬉しいです。やっぱり「髪をきれいにする」ことを伝えていく仕事なので、まずは自分自身がその見本でありたいと思っています。
――お仕事についてお聞きします。今働いている「ROVER」は、どんな美容室ですか?
一言で言うと、スタッフそれぞれの個性が活きているお店です。型にはめるというより、一人ひとりが自分の好きな施術や技術を持っています。
もちろん一定の小さなルールはあります。でもそれ以外はオーナーが自由に挑戦させてくれるので、スタッフが自分らしくのびのびと働ける環境です。セミナーを開いている人もいますし、美容室以外の外部活動としてヘアメイクをしている人もいます。もちろん活動で得た収益はすべて本人のものです。
私の場合は、ヘアケア、特に「美髪作り」に特化して、YouTubeやInstagramで発信しています。SNSを見て来てくださるお客様も多く、髪の状態を見ながら、そのときどきに合ったケアを提案しています。

――お客様の髪をきれいにしていくうえで、最初にどのようなところを見ているのでしょうか。
まずは髪の状態ですね。肌と同じで、髪の状態も常に変わっていきます。お客様のなかには「髪が傷んでいるからまとまらない」と思っている方も多いです。でも実は、ダメージではなく、もともとの髪質が原因でまとまりにくくなっていることもあります。
だから、これまでの施術履歴を伺いながら、お客様の髪の声を聞くように状態を見極めます。そのなかで、もともとの髪質を活かしてケアで整えていくのか、縮毛矯正などの施術で艶のある状態に近づけていくのか、お客様と一緒に髪をきれいにしていく方法を考えています。
――サロンワーク以外では、どのような活動をしていますか?
ECサイトを運営しています。お客様のなかには、遠方から来られる方や、施術後に予定がある方もいらっしゃいます。だから、商品をその場で持ち帰らなくても、「おすすめはこれだから、ECサイトで買ってね」と案内できる形にしたほうが便利だと思ったんです。

サイトではサロンで取り扱っているものに加え、私自身が選んで仕入れた商品も販売しています。市販品ではなく、美容専売品を中心に、シャンプーだけでも100種類以上は試してきました。そのなかから本当にいいと思ったものを選んでいるので、自信を持っておすすめできます。
幼い頃の憧れから、美容師の道へ
――やしまさんが髪やヘアスタイルに興味を持ったのは、いつ頃ですか。
髪への興味は、幼稚園時代からありました。友達がかわいい髪型をしていて、それにとても憧れていたんです。「自分もあんなふうにしたい」と思って、母にお願いして結んでもらっていました。
小学生の頃は、雑誌を見ながら自分でヘアアレンジをしていました。卒業アルバムの将来の夢にも、「美容師」と書いていて。その頃から自分の髪をかわいくしたいし、周りの子の髪もかわいくしてあげたい、という気持ちが強かったんだと思います。中学生の頃には、「私は高校卒業後に美容専門学校に行く」と決めていたので、お金のことも考えて、絶対に私立の高校には行かないと決めていました。

――美容専門学校を卒業後、最初に勤めたお店はどんな職場でしたか?
最初に就職したのは、皆が憧れるようなカリスマ美容師さんがいる原宿のお店です。実は美容師になるからには、自分が担当したスタイルで雑誌に載りたいと思っていて (笑)。ただ、そこで人生で初めての挫折を経験して……。
――何があったんですか?
当時はまだ美容業界が体育会系の時代で、本当に厳しかったんです。厳しいスタイリストの方も多くて、パーマ液をつけるアプリケーターを投げられたり、先輩が首元を掴まれているのを見たりして、怯えながら仕事をしていました。スタッフの入れ替わりも激しかったですね。
一番しんどかったのは、お給料が少なく、休みも少なかったことです。月の休みは6日ほどで、雑誌の撮影に向けたモデルハントもあり、毎月数名モデルを確保する仕事もありました。担当者が決まっていて。達成できないと休日に街へ出てモデルを探すように言われることもありました。撮影に同行することもありましたね。
いわゆる激務でしたが、体は元気でしたし、気を病んでいたわけでもありませんでした。ただ、美容師はお客様をきれいにして喜んでもらう仕事なのに、このお店は自分の大切な人を安心して連れてこられる場所ではないと感じてしまって。7カ月で退職を決めました。
表参道でスタイリストへ。突発性難聴を経て、チームで働く道を選んだ理由

――退職してからは、どのように美容師を続けていったのですか。
美容師の仕事自体は大好きで、絶対に続けたかったんです。だから、1カ月後には別の美容室で働きはじめました。表参道エリアにあるアットホームなサロンで、丸3年アシスタントをして、4年目からスタイリストになりました。
ただ、お客様を担当する立場になってすぐに、突発性難聴になってしまって。ある日、シャワーを浴びていたら、突然、右耳の音がパツッと途切れた感覚があったんです。耳鳴りもしていました。翌朝すぐに耳鼻科へ行ったところ、大きな病院を紹介されました。そこで1週間入院し、ステロイド治療を受けました。その後、生活には支障はありませんが、今でも完全には治っていません。

――突発性難聴ですか……!原因の心当たりはありましたか。
自覚はなかったのですが、お客様を担当する責任や売り上げへのプレッシャーやストレスがあったのだと思います。でも、仕事はとても楽しくって。自分の技術で喜んでもらえることが本当に嬉しかった。
その後、結婚をして、それを機に少しゆっくり働いてもいいかなと思い、お店を退職して、1年ほどフリーランスの美容師として美容室の一角を借りて働きました。この働き方は自由がありましたね。
でもその後、やっぱりチームで働きたいと思ったんです。美容の技術は流行があり、自分一人の情報量だけでは追いつかない部分があります。仲間と情報を持ち寄り、共有しながら成長できる環境のほうが、長く美容師を続けられると思いました。
――その後、ROVERに入られたと。
そうです。声をかけてくださったのが、今のオーナーである小林直樹さんでした。実は最初に勤めた美容室にいたスタイリストの方で、私がそのお店を辞めるときに、優しく話を聞いてくださったんです。そのときに「もしお店を出すときがあれば誘ってください」と伝えていて、それを覚えていてくださり、ROVERのオープニングスタッフのスタイリストとして声をかけていただきました。
――やしまさんから見て、小林さんはどんな方ですか?
スタッフに長く美容師を続けてほしいという思いが強い方です。お店の経営に必要な利益を残したうえで、できるだけ働く人たちに還元したいという考えを持っていて。「これをやりたい」と言ったことも、大きな問題がなければ「いいよ」と任せてくれる。本当に大らかで利他的な方ですね。
だからこそ、私もROVERで美容師として働きながら、ECサイトや発信にも挑戦できています。心から、オーナーには感謝しています!

――ROVERに入ってから、人生の面でも大きな変化があったのでしょうか。
はい。そこから美容師としてキャリアを積み、仕事がどんどん楽しくなっていきました。33歳のときに今の夫と結婚し、子どもにも恵まれ、今は3児の母でもあります。よく驚かれるのですが、第三子の産後は3週間ほどで復帰しました。
――産後すぐに復帰したのは、なぜだったのでしょうか。
単純に美容師の仕事が楽しいんです。技術職なので、時間が空くとブランクも出ます。その土台を崩したくないという気持ちがありました。
それに、お客様と話す時間が大好きなんです。髪の悩みでも、人生の悩みでも、何でもいいから解決したい。実際に「やしまさんと話したいから通っています」「パワーをもらえます」と言ってくださるお客様もいます。技術だけではなく、人として会いに来てもらえることも嬉しいです。だから、この道を選んでよかったと思っています。

北原孝彦さんとの出会い。「一人でやるな」という言葉の重さ
――北原さんを知ったきっかけについて教えてください。
TikTokです。第二子を妊娠していた頃にたまたま北原さんの動画が流れてきて、YouTubeも見るうちに「北原の精神と時の部屋(※)(現・UBM)」に興味が湧いて、2023年に入会しました。
実は第一子の産休中、何もしないまま過ごしてしまったことをずっと後悔していたんです。育児の時間そのものは穏やかで幸せでしたが、正直、少し手持ち無沙汰で。もっとできることがあったんじゃないかと思っていました。その思いがあったので、第二子のときは大きなお腹のまま合宿にも参加しました。
※北原の精神と時の部屋:北原孝彦が代表を務めるビジネス塾。2020年に設立し、2024年11月にUBM(ビジネス行動管理大学)に改称。
――これまで現場の美容師としてのお話でしたが、その頃から発信や、いずれ起業することも考えていたんでしょうか。
そうです。実はサロンワークをしながら、YouTubeとInstagramでヘアに関する発信を続けていたんです。最初はヘアアレンジの発信が中心でしたが、「髪がきれいですね」と言っていただくことが増えて、ヘアケアに軸を移していったんです。スタートダッシュが良くて、そのうち何本かはめちゃくちゃバズりました。
そして発信を続けるなかで、「紹介している商品はどこで買えますか?」と聞かれることが増えてきたんです。それがきっかけで、ECサイトを立ち上げました。試行錯誤しながら商品を精査していって、初年度は年商1000万円。その後も右肩上がりで、3年間で約3倍の3440万円まで伸びました。
――発信やECサイトが伸びていくなかで、北原さんから言われて印象に残っている言葉はありますか?
「一人でやるな」です。当時、YouTubeもECサイトも、基本的には全部一人で進めていました。北原さんからは、「誰かを巻き込みなさい。巻き込む人がいないなら教えなさい」とずっと言われていました。
途中で、今まで売ってきたアイテムが売れなくなったタイミングがあったんですね。そのときに、「じゃあ自分のオリジナル商品を作ろうかな」と考えた時期もありました。でも、北原さんからは「それもきっとあなた一人でやるし、絶対こけるから、今はそこじゃない。これまで自分が実装して積み上げてきたことを、他の美容師さんに向けて継承しなさい」と助言していただきました。
――北原さんの言葉が、大きなきっかけになったんですね。
はい。その後、北原孝彦アカデミー(※)(以下、アカデミー)の告知があって、入りたいと思って面談を受けたときにも、「あなたは本当に一人で生きてきた。もっとたくさんの人と協力し合って生きていきなさい」と言っていただきました。その言葉が響いたんです。これまでの人との関わり方を振り返って、後悔もありました。だから、今から生き方を見直していきたいなと思って。その後すぐに、アカデミーに入りました。
※北原孝彦アカデミー:UBM(ビジネス行動管理大学)の学びをベースにしながら、北原孝彦のより近くで学ぶ区画。北原氏が直接指導にあたる。メンバーは経営スキルだけでなく、人としての在り方を学ぶ。

美容師向け勉強会とコンサルで、仲間と育つ道へ
――最初に取り組んだことは何でしたか。
北原さんから「美容師さん向けの勉強会を行いなさい」とアドバイスをいただいて、始めました。最初は、とにかく自分が今まで実践して、積み上げてきたことを全部まとめて伝えようと思ったんです。物販のノウハウだけではなく、ファン化の考え方や、SNS発信、お客様との向き合い方なども話しています。
――参加しているのは、どのような方が多いのでしょうか。
女性、特に同世代のママ美容師さんです。私と同じで、今まで通りサロンワークの時間が取れない。でも、その分お給料が減ってしまう。だから、他の部分で売り上げを立てたいという方が多いですね。
勉強会は定期的に開催していて、参加をきっかけにコンサルに進む方や、物販を始める方も出てきています。 参加した方が勇気をもらい、「自分も頑張ろう」と思える場になっているのかなと思います。

――勉強会を始めたあと、活動の方向性には変化がありましたか。
美容師向けの勉強会を始めたあと、北原さんのYouTubeにも出演させていただき、その流れで今後の方向性についても相談しました。それまでは、ヘアケアの発信、ECサイト、美容師向けの活動など、いろいろな可能性を同時に考えていたんです。
でも北原さんからは、まずは美容師向けのキャリア支援に絞ったほうがいいと助言をいただき、今はコンサルが一番合っているのではないかと考え、メインで取り組んでいます。
――どんなことを教えていますか?
「お客様にとって唯一無二の美容師になってほしい」と教えています。お客様への向き合い方は、リピートにも信頼にもつながります。そこからファン化し、物販にもつながっていくと思っています。だから、その方にとって、歴代の担当美容師のなかで一番親身に、髪の悩みに一生懸命に向き合う。その姿勢を大事にしてほしいと伝えています。
――これから、女性美容師の働き方にどのような形で関わっていきたいですか。
コンサルを通じて一緒に成長してきた方たちと、美容業界に貢献できたらいいなと思っています。まだ何ができるかは明確ではないのですが、今、北原さんのもとで学んでいるリーダーとしての考え方や、利他の思考を一緒に身につけていけたら、女性美容師の強いチームが作れるのではないかと思っています。
――最後に、これからも大切にしていきたい思いを聞かせてください。
年齢やライフステージを重ねた女性美容師には、まだまだ届けられる価値があると思っています。現場で培ってきた経験や技術があり、女性のお客様から信頼されやすい部分もあります。でも現状、美容業界はまだ、働き続けやすい環境が十分に整っているとは言えないと感じています。だからこそ、同じ想いを持つ方たちと一緒に、ライフステージが変わっても楽しく美容師を続けられる土台を作っていきたいです。

取材を終えて
やしまさんの髪は、信じられないくらいきれいです。ハイトーンなのにサラサラ、ツヤツヤで、思わず見惚れてしまいます。髪の美しさで知られる北原孝彦さんにも引けを取らないほどです。
そして、やしまさんといえば、キラキラの笑顔!いつも軽やかに事業に取り組んでいる姿が印象的です。でもその裏には、激務の日々や突発性難聴があったなんて意外でした。3児の母として子育てをしながら、日々挑戦を続けているところも尊敬しています!
(記事制作:ひとひら企画/インタビュアー:渡辺まりこ、人生の軌跡グラフ制作:Emodea・相場綾香)
※掲載情報は2026年6月現在のものです。最新情報は公式サイト等をご確認ください。

